電子契約書は、紙の契約書で起こり得るさまざまな問題を解決できる方法の一つです。しかし、良いことばかりではなく紙の契約書にはない問題点があるのも事実です。今回は、紙の契約書と電子契約書のそれぞれの問題についてまとめました。
目次
従来の紙の契約書の問題点とは
契約書は紙に記入して押印するもの、という印象が強いものですが、契約締結後の書類保管などに関して、紙の契約書にはいくつかの問題点が挙げられます。
コストがかかる
紙の契約書の問題点として多く挙がるのがコストです。紙の契約書は印刷して作成することが増えることから、印刷コストがかかります。自社で印刷をするにしても、インク代や用紙代が必ず発生するでしょう。さらに、契約相手へ契約書を郵送する場合は郵送代もかかります。
そして、紙の契約書には印紙税の課税対象になるものが含まれるため、契約書の書類によっては収入印紙のコストもかかります。契約内容や契約金額が高額になる場合、印紙税のコストだけで大きな額になることも考えられます。
契約書の検索や管理負担が大きい
契約書は、契約締結後に必ず双方で保管しなければならないものです。紙の契約書は、少ない枚数であれば管理はさほど難しくないですが、量が増えるにつれて管理の負担が増えていきます。大量の契約書になると、保管場所の確保や整理も必要になってくるでしょう。
大量の契約書を保管している場合、後に契約書を探す際にも労力がかかります。また、1枚の契約書であっても、複数の部署での共有が難しい点も紙の契約書の問題点といえます。
紙の契約書の問題点を解決する電子契約書
電子契約書は、紙の契約書でよく挙がる問題点を解決する方法として注目されています。では、電子契約書の導入によってどのような問題が解決できるのかを紹介します。
高いコスト削減効果
先述のように、紙の契約書を使用していると印刷代や収入印紙代などさまざまなコストが発生します。しかし、電子契約書は電子データのみで行う契約となるため、従来の契約書で発生していたコストを大幅に削減することが可能です。
電子契約書は紙を使用しないため、印刷コストがかかりません。書類を郵送することもないことから、郵送代も削減できます。収入印紙は、基本的に紙の契約書に貼付するものであるから、現状では電子契約書では印紙税が不要とされています。そのため、印紙税がかからない点も、電子契約書が高いコスト削減効果を得られる理由です。
書類の保管などの業務効率化
紙の契約書は、量が増えると保管や整理・管理の負担が増えていきます。保管場所の確保や整理のためのファイルにかかる費用、人件費など、契約書の量が増えるにつれて保管にかかるコストも高くなってしまいます。
電子契約書であれば、電子データのみでの保管が可能となるため、契約書の保管場所を取りません。保管場所の確保や整理・管理にかかる人件費も不要となり、業務を効率化できるでしょう。電子データは検索性に優れているので、大量の契約書でも検索機能を使用すれば容易に契約書を探すことができることも、業務効率化につなげられる理由です。
電子契約書にもある問題点
ここまで見てきたように、紙の契約書よりもメリットが大きいと思われる電子契約書にも、いくつかの問題点があります。
導入に手間がかかる
近年、多くの企業で電子契約書の導入が進んでいますが、紙の契約書にこだわる企業も多いのが現状です。契約は紙に押印をして初めて有効となるという意識はまだまだ根強いため、電子契約書の導入に踏み切れない、導入する予定はないという企業も少なくありません。
また、電子契約書の導入はすぐにできるものではなく、電子証明書の取得などの事前準備が必要です。紙の契約書から容易に電子契約書へ移行できず、手間がかかってしまうことは、電子契約書を使用する上での問題点といえます。
電子帳簿保存法に則った運用が必要
電子契約書は、電子データで書類を保存することを認める「電子帳簿保存法」に則って運用しなければなりません。紙の契約書のみを使用していた場合には意識することもなかった法律なので、電子契約書を使用する際は、この電子帳簿保存法の要件をしっかり確認した上で運用することが求められます。
すべての契約書に対応できない
現状では、電子契約書はすべての種類の契約書で使用できるわけではありません。書面での契約が義務付けられている一部の契約書は、電子契約書での締結ができないので、契約書の種類によっては完全電子化は難しくなるでしょう。
電子契約書を運用する際は問題点も知っておこう
電子契約書は、コスト削減や業務効率化に大きな効果が期待できるなど、紙の契約書にはないさまざまなメリットがあります。しかし、従来の契約書とは異なる運用方法となるため、使用方法が異なる、またはそもそも電子契約書が使用できないケースも発生します。このような問題を把握して、電子契約書を活用しましょう。