近年、オンラインで仕事を進めるようになったり、クラウド上で安全にデータを保存できるシステムが整うようになったりしたことから、契約書においても紙媒体を廃止して電子化させようと考える人が増えています。
とはいえ、個人の場合は電子契約書を導入するメリットがあるのかどうか疑問に思う人がいるのも事実です。そこで今回は、個人事業主に焦点を当てて電子契約書を導入する際のポイントや、相手が電子契約書を受け入れてくれない場合の対応方法について説明します。
目次
個人事業主が電子契約書を導入する際のポイント
個人事業主が電子契約書を導入する場合、いくつかのポイントを押さえてサービス導入を検討することが大切です。導入する電子契約書によっては、仕事の生産性を下げることにつながってしまう危険性もあります。ここから、個人事業主が電子契約書を導入する際のポイントについて説明します。
費用対効果が高いかどうか
電子契約書を導入する場合、紙媒体の契約者と比較して費用対効果が高いかどうかを考えることが大切です。電子契約サービスを提供する会社によって、サービス内容や導入費用が異なるため、場合によっては紙媒体よりもコストがかさんでしまうことがあるからです。
安全性が担保されているかどうか
契約書を電子化する上で、安全性が担保されているかどうかも重要な判断基準です。特殊サイバー犯罪が蔓延していることから、電子契約書においてもセキュリティ対策は重要です。とはいえ、電子契約書は紙媒体の契約者よりも対策を講じやすいため、時代が進むにつれより安心して利用できるように進化しています。
本当に業務を効率化させられるか
電子契約書を導入しても、システムの利用方法が複雑であったり、取引先の協力が得られずかえって業務負担が増えてしまったりするのではという不安を抱える人もいます。電子契約書サービスによっては、契約に係る業務をオンラインで管理できる上に紙媒体の契約書も一元管理できるものもあるため、どれくらい業務効率化できるかをシミュレーションした上で電子化することが望ましいでしょう。
電子契約書が認められていない場合もある
電子契約書を導入する上で注意しておきたいのが、電子契約書が認められていない契約もあるということです。定期借地契約や定期建物賃貸借契約、特定商品取引法で書面交付義務が定められているものなどは、紙媒体での契約書が必須となっています。そのため、これらの契約書を頻繁に使用する会社の場合は、電子契約書を導入したとしても契約書として認められないため注意が必要です。
相手が電子契約書を受け入れてくれない場合はどうする?
紙媒体の契約書を廃止して電子契約書を導入しようとしていても、取引相手によっては電子契約書の導入を受け入れてくれない場合もあります。ここからは、相手は電子契約書受け入れてくれない場合の対応方法について説明します。
相手にだけ紙媒体で契約書を保管してもらう
1つ目の対応方法は、相手にだけ紙媒体で契約書を保管してもらうことです。契約書に、「契約書を書面で作成した後に各自記名押印及び電子署名を施し、一方が紙媒体の契約書を、もう一方が電磁的記録を保管する」と記載しておけば、自社は電子契約書を保管して、取引相手は紙媒体の契約書を保管できます。
紙媒体の契約書を自分だけPDFで保管する
もう1つの方法は、紙媒体の契約書を自分だけスキャンして PDFデータとして保管する方法です。事前に所轄の税務署に電子帳簿保存法の承認を受けていれば、一定水準以上の解像度とカラー画像で取り込み、データごとにタイムスタンプを付与することで、契約書の電子保存が認められます。その場合、PDFとして取り込んだ契約書は取引金額などの必要事項がすぐに検索できるよう、システム構築しておきましょう。
紙媒体の契約書をPDFで保管する際の注意点
紙媒体の契約書をPDF化してデータ保存する場合は、そのデータに電子署名を付与することが大切です。電子署名が付与されていなくても契約書として認められます。しかし、トラブルが発生して裁判になった場合、電子署名のない契約書は証拠能力が低くなってしまうからです。
いざという時のことも考えて、PDFに電子署名を付与しておけば、きちんとした証拠として裁判所に提出できるため、自分自身を守ることにもつながります。
安全性の高い電子契約書を作成することが大切
個人事業主で電子契約書を導入するときは、いくつものサービスからどれを選んでよいか悩むかもしれません。最も大切なことは契約書としての信頼性が担保できるのかということや、セキュリティ上の安全性が高いかどうかです。
これらを確かめた上でサービスを導入し、電子契約書のメリットを活かしてより生産性の高い仕事ができるようになってくださいね。