事業によっては、契約に関わる人が複数いる場合もあります。そのため、最終的に契約書に署名をする際、事業の代表者以外の人が署名する場合もあるのです。
しかし、契約書への署名が認められていない人が署名をしてしまうと、思わぬトラブルに発展しかねません。
そこで本記事では、契約書の署名者として認められる人物がどのような人なのか、また、署名時の注意点について説明します。
目次
代表者と同一人物が契約書に署名するのが原則
事業間で約束を締結する際にサインできる人物として認められているのは、原則として事業の代表者となっています。そのため、代表者以外の人物が契約書に署名するということは、契約手続きにおいてイレギュラーなことだと言えるのです。
事業の代表になっている人は、会社の運営や法的な場面での行為について権限を持っているとされているため、約束を結ぶ手続きにおいても、原則として代表者の責任でサインする必要があります。
代表者が署名者にならないパターン
約束を締結する手続きを行う人物が、原則として事業主であるとされていても、全ての手続きでサインを行っていては、事業の運営に専念することができなくなってしまいます。
そのため、代表者以外が契約書の署名者になることが認められているパターンを知っておき、事業内容にあった契約手続き方法を選べるようになっておかなければなりません。
ここからは、代表者がサインする人物にならないパターンについて、詳しく説明します。
代表者から権限委譲された社員名義で契約する場合
1つ目は、事業主からサインする行為を認められた社員の名前で、文書に記名する場合です。
事業主でない人がサインする場合、その人に手続きの責任が認められていることを社内で定めていれば、事業主に代わってサインできます。
そのため、会社の規定に則って、適切な契約書を作成するためには、社内で協議した上で、文書に記名できる人物や責任の範囲について定めておくことが大切です。
社員が代表者の名義で代理署名する場合
文書へサインする責任が委ねられている場合、サインを任せられた人の名前を記入することが多いです。しかし、事業主によっては、社員が代表者の氏名を記入するケースもあります。
契約書に署名する場合、サインを行う本人の名前を書くことが原則ですが、多くの事業において、締結手続きを専任とした人が、会社の名前を使って文書に署名しているのが実態です。
とはいえ、署名欄に会社の印鑑が押されていれば、代表者本人の意思を明確に表しているものだと裁判所は推定します。また、2020年4月の時点で代理署名に関して争われた裁判例が存在しないため、代理署名の是非について明確に述べられないのが現状です。
契約書に署名する際の注意点
契約書に署名する際、注意点を理解しておかなければ、文書として正確なものであると認められなくなったり、スムーズな事業運営ができなくなってしまったりする可能性があるため、注意が必要です。
ここからは、契約書に署名する際の注意点について説明します。
所属部署や役職が明記されているか
契約書の署名者欄に、正確な会社名が記載されているかどうかを確認するのはもちろん、所属部署や役職が明記されているかを確認することも大切です。
署名者の役職や肩書きから、契約書の署名権限を与えられている人かどうかを推測することができるため、会社名と氏名のみの記載になっている場合は、署名者に役職や肩書きの記載を求めるようにすると安心です。
サインする人に権限があるか
役職や肩書きから署名権限が与えられているかを推測するのも良いですが、署名権限についてもっと詳しく確認しておきたいという人は、具体的な確認方法を知っておく必要があります。
〇登記事項証明書で確認する
登記事項証明書には、事業の代表者や支配人の氏名が記載されています。登記事項証明書は、法務局で手に入れられるだけでなく、オンラインでも確認することができるため便利です。
ただし、代表者や支配人以外の人物に署名権限が与えられている場合、登記事項証明書で氏名を確認することができないのがデメリットです。
〇権限を証明する会社の文書を確認する
署名者が代表者や支配人以外の人物になっている場合、本当に署名権限が与えられているかを確認するためには、会社の社内規定などの文書を確認しなければなりません。
しかし、相手の社内文書を見せてもらうということは、承諾されにくかったり、信頼関係を崩してしまったりするリスクがあるため、よほど疑わしい場合でなければ避けた方が良いでしょう。
契約内容に肩書が見合っているか
署名欄には会社名だけでなく肩書きも記載してもらうのが安心です。記載された肩書きが「代表取締役」や「支配人」となっていれば安心です。
しかし、聞き慣れない肩書きや権限が確認できないような形が気になっている場合は、権限が与えられていない可能性があるため、注意しておきましょう。
署名者として認められる条件や注意点を理解して契約しよう
本記事では、契約書の署名者として認められる人物や注意点について、詳しく説明しました。
ここで説明した内容を参考にして、適切な文書を作成できるようになり、スムーズな事業運営ができるようになってくださいね。