企業活動を行うにあたり、契約書は多くの場面で用いられる書類です。取引が増えれば、その分取り扱う契約書も増えていきますが、紙の契約書の場合書類が溜まっていく一方、管理や保存場所に苦労するケースも出てきます。
では、契約書はどの程度の期間保存するべきなのでしょうか。今回は、法律上定められた契約書の保存期間と保存方法について、詳しく解説します。
目次
法律上、契約書はどの程度の保存期間が必要?
契約書を保存しなければならない期間は、法律で定められています。契約書の種類や法律によって保存期間は異なるので、取り扱う契約書で保存期間が変動する場合もあります。
法人税法では最低7年
企業で用いられる契約書は、どんどん溜まっていくこともあるでしょう。紙の契約書の場合、長期間の保存になると保管スペースが悩みのタネになることも考えられます。
少なくとも、効力が続いている契約書は破棄はできず、その契約が終了するまで保存が必須です。しかし、効力がなくなった契約書だとしても、法人税法では契約書の保存期間は最低でも7年と定められています。
〇契約書の種類によっては7年以上の保存が必要
一般的な契約書の保存期間は7年ですが、契約書の種類によってはさらに長期間の保存が求められる場合があります。
中でも建築関係の契約書は、過去の耐震偽装事件を踏まえて法が強化された背景があります。そのため、建築士法に基づき最低15年の保存が必要です。
会社法では最低10年
法人税法では契約書の保存期間は7年、と解説しましたが、法人を対象とする法律「会社法」では、契約書の最低保存期間が異なります。会社法に関わる契約書の場合は、契約終了後10年間の保存が義務付けられているので、法人税法で定められた保存期間との違いに注意するべきでしょう。
適切に契約書を保存するための方法とは
最低でも7年や10年、契約書を保存するにはきちんとした管理方法が求められます。どのような方法で長期間契約書を保存すればいいのか、その方法として以下の2種類が挙げられます。
ファイルや文書管理システムを使用する
紙の契約書は数が増えるにつれて管理にかかる労力が増えていきます。7年、10年の保存になると、大量の契約書の管理が必要とされます。
大量の契約書を管理しやすくするための基本的な方法は、「ファイリング」です。紙の契約書を分類して置き場所を決めておけば、後々探しやすくなるでしょう。
ファイリングで分類していても、数が膨大になると使いづらさを感じるかもしれません。そんなときは、文書管理システムを併用するのもおすすめです。文書管理システムでデータベース化しておけば、大まかな内容をシステムで参照でき、原本も探しやすくなるというメリットがあります。
紙の契約書を電子化する
「大量の紙の契約書をスッキリとまとめたい」「これ以上保管場所を取れない」という場合は、現在保存している紙の契約書を電子化する選択肢も検討してみましょう。準備段階で電子化に労力がかかるものの、一度電子化すれば整理がしやすく、契約書を探す際もスムーズになります。
紙の契約書を電子化する際の注意点
上記のように、紙の契約書は溜まっていくと管理にかかる労力が負担となることもあります。既存の紙の契約書を電子化すれば、保存場所を大幅に削減できます。かつ整理もしやすくなりますが、この電子化にはいくつかの注意点があります。
税務署への申請が必須
紙の契約書を電子化するには、「契約書をスキャンしてデジタルデータとして保存して終わり」ではありません。もしただスキャンしただけの契約書のデータがあったとしても、それは単なるコピーにすぎず、原本として取り扱われないのです。
紙の契約書を有効な状態で電子化するには、電子帳簿保存法に基づいて事前に所轄の税務署へ申請を行い、承認を得る必要があります。この事前承認を得ることが、紙の契約書の電子化で必要不可欠なのです。
電子帳簿保存法の要件を満たす必要がある
税務署への事前承認を得ておけば、どのように電子化してもいいというものでもなく、保存方法についても電子帳簿保存法の要件を満たさなければなりません。
この法律では、以下の5つの要件が定められています。
・真実性の確保
・相互関連性の確保
・関係書類等の備え付け
・可視性の確保
・検索機能の確保
真実性の確保にはタイムスタンプの付与や一定以上の解像度、可視性の確保には検索機能を含めた帳簿との関連性の確保なども含まれるので、紙の契約書の電子化では電子帳簿保存法の要件を確認する必要があるでしょう。
契約書の保存期間を知り適正に保存しよう
契約書は、種類に応じて7年または10年、長いもので15年保存が必要な重要書類です。長期間の保存となるケースが多いため、契約書の電子化を含め、適正な方法で保存しましょう。