日本の社会では印章による押印が取引の信用を広く支えています。しかし、その中であまりなじみのないのが「割印」と「契印」ではないでしょうか。
特にさまざまなタイプの冊子が存在する契約書を作成するには、これらを正しく知っておく必要があります。この記事では、割印と契印、契約書の冊子タイプごとのその用い方を解説します。
目次
冊子に押す契印と割印の意味
契約書の信頼性を確認・維持するために用いられる方法には、契印と割印の2つがあります。これらはよく混同されがちですが、実際はそれぞれ明確に定義があり、異なるものとされています。
割印は2つ以上の文書の関連を示す
割印は、2部以上の契約書を作成する場合に、これらの内容が同一であること、または関連性があることを証明します。
割印は、不動産の賃貸契約や雇用契約など複数の当事者間で契約を交わす場合に用いられます。このような契約では締結後、当事者がそれぞれ1部ずつ契約書を保持するため同じ文書が複数部作成されますが、それらが関連していることを割印が証明するのです。
契印は2枚以上の書類冊子のつながりを証明
一方契印は、1つの契約書の紙面が2枚以上にわたる場合、その一部のページが契約締結後に差し替えられてしまうことを防ぐために用いられる押印方法です。1ページ目と2ページ目、2ページ目と3ページ目といった具合にとじられた紙面を2枚ごと、それらをまたぐ形で押印し間違いなくそれらが連続していること、ひいては全体としてひとまとまりであることが証明できるのです。
この方法は公正証書作成時などに用いられますが、製本やホチキス留めなど契約書のつくりに合った押印方法を使う必要があります。
契約書や冊子への正しい押し方
それでは、割印と契印それぞれの押し方を詳しく見てみましょう。両者は用途の違いから押し方だけでなく押す回数もかなり違います。
割印の正しい押し方
割印について特に法律上の規定はありませんが、一般的なマナーやルールは存在します。
まず割印を押印する位置は、契約書の上部が通常です。また、それぞれ残る印影が均等になるよう契約書を重ね押印するのが好ましいとされています。それは、バランスが偏るときれいな印影の方がさも重要であるかのような印象を与えてしまうためです。
また、他にも次のようなマナー・ルールを守るのが一般的とされています。
・割印が上部に残っている方を相手に渡すことが望ましい
・「左から甲・乙・丙の順になるように押す」など配置にもルールがある場合がある
・契約印や実印である必要はない
契印の正しい押し方
契約書の種類によって、契印の押し方は大きく2つに分かれます。1つはホチキス留めされた冊子や袋とじ、もう1つは製本された冊子です。
〇袋とじ冊子に押す場合
紙面がホチキス留めされただけの契約書は、とじられた状態で見開きにし、見開きの真ん中に紙面をまたぐように押印します。これをすべての紙面間で行えば、どの紙面も差し替え不能となり偽造を防ぐことができます。紙面を両面印刷できない場合や、印刷コストを抑えるため袋とじを用いるときも同じように押印します。
〇製本された冊子に押す場合
製本とは、ホチキスなどでとじた部分を製本テープで覆うことです。契約書を製本した場合、すべての紙面がホチキスと製本テープでひとまとめにされているため、契印は製本テープと紙面にまたがるように押印します。ただ、押印する面については表面のみ、裏面のみ、両面といういくつかのルールが存在します。従来は表面の押印が一般的でしたが、近年は裏面に押印することも増えているようです。
契印・割印を失敗したらどうなるか
いくら慎重に丁寧に押印しても失敗することはありますが、そこで慌てる必要はありません。
割印や契印にはそもそも法律上の規定はなく、あくまで契約書が真正であるということを示す証拠の1つです。それらが見づらかったり欠けていたりしたとしても、印影が同一と判別できれば問題ありません。
電子契約なら契印も割印も不要
紙の契約書の作成・製本や押印作業は思った以上に手間がかかります。どれも契約書が「紙面」であることに起因しますから、契約書を電子化し電子契約にすればそれらの手間は一切なくなります。
電子契約書では、電子署名とタイムスタンプという法的に認められた機能を使って契約書の本人性と改竄されていないことを証明します。電子データなので書類ほど保管スペースも必要ない上、契約内容・日付だけでなく取引先や商品などさまざまな要素で、しかも瞬時に検索できるなど多くのメリットがあります。
従来当たり前と考えられてきたこれらの手間やデメリットを減らし、時間や手間を本業の業績のために費やすことができるようになるでしょう。
冊子のタイプで契印・割印を使い分けよう
混同されがちな割印・契印と、契約書のタイプに合わせた押印の仕方について解説しました。割印と契印は本来役割が異なり、用いる書類や冊子のタイプによって押印の方法や場所も異なります。法的な定めはありませんが、押印にはいくつかのルールが存在します。スムーズに契約締結するにはこうしたルールにも配慮し、相手との合意の上で用いるよう努めましょう。