契約書を作成するなら「契約の成立要件」について押さえておこう

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契約書を作成するなら「契約の成立要件」について押さえておこう

世の中さまざまな「契約」がありますが、法的に有効な契約を結ぶためには「成立要件」を把握しておく必要があります。成立要件を満たしていないと、後でトラブルの原因になってしまう可能性があるのです。

この記事では、契約と契約の成立要件について解説します。

 

民法における契約とは何か?

まずは、そもそも「契約」とはどういった事柄なのかについて簡単に解説します。

 

契約とは?

「契約」とは、法的拘束力が有効な約束です。「法的拘束力」とは法律上の効果が義務になるという意味であって、わかりやすく説明すると約束が守られなかった場合に裁判所に訴えを出して裁判所が約束を守るように強制できることを意味しています。

 

契約の種類

一口に「契約」といってもパターンがあって、大別すると「典型契約」と「非典型契約」の2種類があるのです。

まず「典型契約」とは、民法で規定されている以下の13種類の契約がこれに該当します。

 

・売買契約:当事者の一方がお金を払って財産を移転する契約

・贈与契約:当事者の一方がお金を払わずに財産を移転する契約

・交換契約:当事者の間で「お金ではない財産権」を移動しあう契約

・消費貸借契約:当事者の一方が何かを借り受け、使ってから同じ程度の何かで返す契約

・賃貸借契約:当事者の一方が賃料を払うことで何かを借り受ける契約

・使用貸借契約:当事者の一方がお金を払わずに何かを借り受け、使った後に返す契約

・雇用契約:当事者の一方が働いて、もう一方が労働に対する報酬を支払う契約

・請負契約:当事者の一方が仕事を完成させ、もう一方が仕事の結果に対して報酬を支払う契約

・委任契約:当事者の一方がもう一方に法律行為を実行することを委託し、これを承諾する契約

・寄託契約:当事者の一方がもう一方のために物を預かっておく契約

・組合契約:複数の当事者がお金を出し合い、共同の事業を経営する契約

・終身定期金契約:当事者の一方が、対象者の死亡までもう一方または第三者に定期的に金銭を払う契約

・和解契約:当事者間の争いを、お互いが譲歩することで解決する契約

 

民法に定められていない契約の種類を「非典型契約」といい、例えば以下の契約が非典型契約に該当します。

 

・リース契約

・ライセンス契約

・フランチャイズ契約

・秘密保持契約

・労働者派遣契約

・共同研究開発契約

 

2 口頭でも成立する?契約の成立要件

次に、契約が成立するための要件(成立要件)について解説します。

 

基本は「当事者間の意思表示の合致」

契約の成立は、基本的に「当事者間の意思表示の合致」によって成立するものです。この「当事者間の意思表示の合致」とは、「契約の申込み」と「申込みに対する承諾」という2つの意思表示によって成り立ちます。

「意思表示」とは、心の中で法的な効果をもたらすと考える「内心的効果意思」と、この意思を相手に対して示す「表示行為」で構成されています。

 

「申込み」と「承諾」について

「申込み」と「承諾」とは、わかりやすく説明すると当事者の一方による「こうしましょう(申込み)」と、もう一方の当事者による「わかりました、そうしましょう(承諾)」という当事者間の意思表示の合致によって成り立ちます。

 

例えばシンプルな売買契約を例に挙げてみると、

Aさん「このリンゴ1個を100円で売ります(申込み)」

Bさん「そのリンゴ1個を100円で買います(承諾)」

という意思表示の合致により当該売買契約が成立します。

 

よく「口頭だけでも契約は成立するのか?」という疑問が投げかけられるのですが、一部の契約を除いて口頭だけでも契約は有効なものとして成立します。

そうでなければ、スーパーで買い物をするたびに契約書を作成しなければならないことになるのです(一般的な「レシート」は契約書に該当しない)。

 

「有効要件」と「効果帰属要件」について

契約を結ぶうえでは「有効要件」と「効果帰属要件」についても理解しておく必要があります。

「有効要件」とは、わかりやすく説明すると「無効となる条件を満たしていないこと」であり、民法などでは以下の要件を満たしていると契約が無効または取り消しとなります。

 

・公序良俗に反する契約(人身売買や法外な金利による貸金契約など)

・原始的不能な契約(契約成立以前に契約内容の履行が不能である)

・意思無能力者のした契約(契約するための意思能力に欠けている)

・錯誤や通謀虚偽表示による契約(当事者の意思表示において「内心」と「表示」が食い違っている)

・制限行為能力者が単独でした契約(未成年者や被保佐人など)

・詐欺や強迫による契約

 

「効果帰属要件」とは、代理人による契約において代理人の行為が本人に対して法律効果を及ぼすための要件であり、以下の要件事実が必要です。

 

・代理権授与

・顕名(代理人が「本人のために代理行為を行なう」旨を示す)

 

契約書を作成する意味

先ほど「口頭だけでも契約は成立する(一部を除く)」という話をしましたが、これは要するに「契約書なしでも契約は有効に成立する」ということでもあります。

では、契約において契約書を作成することの意味とは何なのでしょうか?

 

トラブルの発生を防ぐため

契約に際して契約書を作成する理由として「トラブルの発生を防ぐ」という意味が大きいです。

昨今、契約の内容は複雑化し、口頭での約束で成立はする契約であってもその内容について完璧に記憶しておくことは難しいでしょう。その結果、「契約内容はこうだったはずだ!」「いいや、そうではなかったはずだ!」と当事者間で意見の食い違いが発生する可能性があります。

そのため、

 

・契約時に契約内容を確認するため

・契約内容を忘れた時に確認できるため

・万が一、当事者間で契約内容に関するトラブルが発生したときに裁判で証拠にするため

 

という理由で、契約書を作成することに意味がうまれるのです。

 

契約成立に契約書作成を要件とする場合

契約書は、「契約を成立させるために必要な場合」もあるのです。例えば「保証契約」については、民法の規定により書面でしなければ効力を有しないと定められています。

また、各業法の規定により、事業者が契約時に消費者に対して契約書を交付することを義務付けている場合もあります。

 

成立要件を満たして契約書を作成しよう

契約は単なる約束と異なり法的拘束力を有する強力な行為です。基本的に当事者間の意思表示の合致により成立しますが、契約書が必要など特殊な要件を満たさなければ無効や取り消しの対象になる可能性もあります。

複雑な契約を結ぶ際や契約書を作成する際には、契約の専門家に相談することも検討してください。

 

 

 

 

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