誰かを正社員で雇用するためには「雇用契約書」という書類を作る必要があります。
雇用契約書に問題があると人事トラブルを引き起こすかもしれないため、余計なトラブルを防ぐためにはきちんとした雇用契約書を作ることが重要です。そこでこの記事では、正社員を雇用するために必要になる雇用契約書の適切な書き方や注意点について解説します。
目次
雇用契約書とは?
最初に、そもそも「雇用契約書」とはどんな書類なのか、基本的なところから解説します。
雇用契約書の意味
「雇用契約書」とは、雇用契約を結ぶ際に作成される書類のことです。「雇用契約」は民法で規定されている契約(典型契約)の一種であり、従業員は労働を行い、その労働に対して報酬を支払う契約のことをいいます。
雇用契約書には各種労働条件(賃金、労働時間、休日など)が記載されており、正社員を雇用する場合はもちろん、その他の労働形態(パート、アルバイト、契約社員など)で雇用する場合でも雇用契約書が作成されるのが一般的です。
雇用契約書は必要?
民法の規定では、雇用契約の際に雇用契約書を作成しなくても口頭だけで雇用契約は成立するとされています。
一方で労働契約法によると、労働契約の内容はできる限り書面により確認するものとされており、言い換えれば「雇用契約書を作成することが望ましい」ということになるのです。
冒頭でも述べていますが労使関係はトラブルが発生する可能性があり、労働条件を雇用契約書で残して確認できるようにすることで雇用に関するトラブルを避けられる可能性が高まります。
正社員向けの雇用契約書の書き方
次に、正社員を雇用する際に作成する雇用契約書の正しい書き方について解説します。
絶対的明示事項
「絶対的明示事項」とは、雇用契約書として正式に認められるために記載しなければならない事項のことです。
雇用契約書には、以下の13種類の項目(「昇給」に関しては口頭での明示でも良い)を必ず記載しなければなりません。
1、労働契約の期間(定めがない場合には「期間の定めがない」と記載する)
2、就業する場所
3、労働の業務内容
4、始業時刻および終業時刻
5、所定労働時間を超える業務の有無(残業のこと)
6、交替制勤務に関する事項(交替期日や交替順序など)
7、休憩時間
8、休日・休暇
9、賃金の計算方法
10、賃金の支払い方法
11、賃金の締切や支払い時期
12、退職に関する事項(解雇事由など)
13、昇給に関する事項(口頭でも良い)
相対的明示事項
「相対的明示事項」とは、該当する制度が企業に存在する場合に明示しなければならない事項のことです。
法律の規定では口頭説明でも良いとされていますが、該当する制度がある場合には後のトラブルを回避するためにも雇用契約書に記載しておくことをおすすめします。
雇用契約書の相対的明示事項は、以下の8種類です。
1、退職手当に関する事項(退職手当の計算方法や適用される労働者の範囲など)
2、臨時の賃金や賞与に関する事項(ボーナスや報奨金など)
3、労働者負担の食費や作業用品に関する事項
4、安全や衛生に関する事項(健康診断や喫煙所など)
5、職業訓練に関する事項
6、災害補償や業務外での疾病扶助に関する事項
7、表彰および制裁に関する事項
8、休職に関する事項(産休などの法定休暇および会社独自の法定外休暇)
9、昇給に関する事項
正社員向けの雇用契約書の注意点
最後に、正社員を雇用する際の雇用契約書を作成する場合に注意すべき3つのポイントについて解説します。
2通作成する
雇用契約書は2通作成し、従業員と企業でそれぞれ1通ずつ保管しておきましょう。
法律の定めでは必ずしも2通作成しなければならないとはされていないのですが、お互いに労働条件等を確認できるようにすることで、余計なトラブルや手間の発生を避けることができます。
試用期間の有無など記載事項をきちんと確認する
雇用契約書には「試用期間の有無」など、必要な記載事項がすべてそろっていることを確認してください。
企業によって採用している制度が異なるので「相対的明示事項」が異なります。テンプレートをダウンロードしてそのまま使用する場合、自社の雇用契約書に必要な項目が欠けている、または不要な項目が含まれている可能性があるので注意しましょう。
他の雇用形態向けの契約書とは分ける
雇用契約書は、雇用する従業員の「雇用形態」に合わせて用意することをおすすめします。従業員は、雇用形態によって雇用条件が大きく異なるので、同じ書式の雇用契約書では過不足が発生する可能性があるのです。
「正社員」「契約社員」「パート・アルバイト」といった雇用形態ごとに雇用契約書を作成しましょう。
注意点を守って雇用契約書を作成しよう
正社員登用に際してはトラブル回避のためにも正しい形式の契約書を作成してください。
ネット上ではテンプレートも数多く用意されていますが、相対的明示事項は企業によって異なりますので、自社向けの雇用契約書として適切に機能するかどうか見極める必要があります。
雇用契約書をはじめとして、企業で利用する契約書について不安がある場合には、契約関係に詳しい専門家の力を借りることも検討してください。