契約書とは、契約を締結する際に作成する契約の内容を明記した文書のことです。通常ならば契約の締結時に作成しますが、時には何らかの理由によって契約の開始日より後に契約書を作成することもあるでしょう。
その際、後から作成した契約書の契約日はどのようにすれば良いのか、迷いますよね。そこで使えるのが「遡及効」です。遡及効を利用すれば、契約書の効力を契約当日に遡らせることができるのです。
この記事では契約書における遡及の使い方やその効力について詳しく解説します。
目次
遡及の意味と使う場面とは?
何らかの理由で契約書を作成する前に契約を開始し、その後契約書を作成する際に契約書の日付を過去に遡らせることのできる遡及効。遡及の意味と具体的な遡及効の使い方を解説します。
遡及の意味
そもそも遡及とはどのような意味なのでしょうか。遡及とは「そきゅう」と読み、過去のある時点まで遡り、効力を示すという意味で、法律用語として使われることが多いです。
どんな時に契約書で遡及条項を使う?
契約書で遡及条項を使うときは、契約書を作成する前に契約を実行した場合です。ビジネスでは、例えば口約束で業務を開始したり、契約書の作成前に契約を開始したが、実務に関係ない内容に合意ができなかったりすることが多々起こり得ます。
そんなときは契約開始後に契約書を作成することとなりますが、契約書に記す契約日を契約書作成当日にすると、それ以前の出来事については契約書の効力が及ばなくなってしまいます。
そこで遡及条項を使い、契約日を契約書作成日ではなく、契約開始日まで遡らせることで、契約開始日から契約書の効力を発揮させられるのです。
遡及して契約するのは法律違反?
実際に契約書を作成した日にちを遡及してずらすことは法律違反にはならないのか、気になる人は多いでしょう。遡及して契約するのは、双方の合意があれば法律違反にはなりません。
遡及効の使い方
遡及効を使う際に、具体的にはどのように使うのかよく分からないという人は多いのではないでしょうか。そこで、ここでは遡及効の使い方について、例文を用いて解説します。
遡及効を使う際の条文の例文
遡及効を使う際には、以下のような条文を契約書に追加しましょう。
「本契約は契約締結の日にちにかかわらず、〇〇年〇月〇日に遡って効力を生じることとします。」
このような条文を双方合意の上で書き加えることで、契約書の効力を実際の契約日まで遡って発揮させることができるのです。
逆に書き忘れてしまうと、契約書の効力を正しく発揮できなくなってしまうので、契約書の作成日と実際の業務開始日が異なる場合は、必ずこの文章を書き加えることを忘れないように注意しましょう。
遡及効の注意点・問題点とは?
遡及効を便利だからといって乱用すると、取引相手から信頼を失う原因になることもあります。ここでは遡及効を使う際の注意点や問題点について解説します。
遡及効の乱用は信用を損ねる危険がある
遡及効は契約書を実際の契約より後に作成した際に、契約書の効力を契約当日まで戻って発揮できるようにするので、とても便利です。しかし、遡及効は契約書の作成が何らかの理由によってやむを得ず契約当日に出来なかった場合にのみ使用するようにしましょう。
なぜならば、遡及効を使うということは、実際の業務開始日から契約書作成日までは契約書が存在していないということを意味します。もし契約書を作成するまでの間に何らかの問題が生じた場合、契約内容を確認できないためトラブルに発展しがちです。
このように契約書を後から作成するということはトラブルの原因となりやすいので、極力遡及効には頼らない方が良いのです。
契約日のバックデイトは避けた方が良い
契約書の作成において、遡及は実際の契約日に遡って効力を発揮できるようにしますが、バックデイトはその遡及を行っていない状況を差します。
つまり、例えば3月1日に業務を開始したけれど、契約書の作成が間に合わず、3月15日に作成した場合、遡及効を使わずに3月1日の日付で契約成立とするのがバックデイトです。
契約においてバックデイトはするべきではありません。必ず遡及効を使うようにしましょう。
■ 遡及効を使うべき理由とは?
なぜバックデイトはするべきではないのか。それは、契約書に嘘の情報が書かれることとなり、契約書の信憑性を下げることになるからです。
契約の締結日と契約書の作成日が異なる場合、必ず遡及の条文を記しましょう。
契約書で遡及効の乱用は避けるべき
契約締結時に何らかの理由で契約書の作成ができず、後程作成した際に契約書の効力を過去の締結時に遡って効力を発揮させられる遡及効はとても便利なものです。
しかし、遡及効があるからといって、毎度契約書の作成を後回しにしても良いというわけではありません。遡及効の乱用は取引相手との信頼を下げてしまう原因になるので、あくまでやむを得ない場合にのみ使うべきなのです。