新しい部署に配属になり、今まで経験したことがない契約事務を任され、困ったことはないでしょうか。契約は代表者が締結するというイメージがあるので、事務方がどこまで担って良いか、迷うこともあるはずです。
そこで、この記事では契約書に代表者以外が押印しても有効となるかを解説します。代表者変更前後の契約書の有効性についても解説するので、今後契約業務に携わるときの参考にしてください。
目次
契約書は誰が締結すべきものか
法人は、法が人とみなしているのであって、人ではありません。そのため、実際に会社そのものが契約を締結することはできません。では、誰が法人契約を締結するべきなのでしょうか。
原則代表者名で締結
社内において、役職の最上位であり代表権を有する人物が代表取締役です。会社法349条4項の規定からもわかるように、代表取締役は株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有しています。
そのため、契約書も同様に代表取締役が締結するのが原則です。なお、必ずしも社長=代表取締役ではありません。代表取締役を設置していない会社では、取締役が代表権を有していることもあるということを留意しておきましょう。
代表者印の押印が必要
契約書を締結する際には、署名や記名押印が必要になります。「署名」が本人が自らサインすることをさす一方、「記名」はゴム印などを用いて名称を記すことを意味します。
署名のみの場合もありますが、一般的には記名押印されるケースが多いです。記名は会社所在地、会社名、役職、代表者氏名を表示し、あわせて代表者印を押印します。
■代表者印と会社印の違い
では、代表者印は会社印とは何が異なるのでしょうか。社印とも呼ばれる会社印は四角く、社名が刻印されているものです。一般的に稟議書などの社内文書や請求書を発行する際に使用されます。
一方、代表者印は外枠に会社名があり、中には代表取締役印と刻印されます。会社登記の際に法務局で登録をしている、いわば法人の実印です。
どちらも重要な印鑑ですが、使う場面や効力が異なりますので、しっかり理解しておくようにしましょう。
代表者変更した場合の旧契約書の有効性は?
会社はあくまで組織なので、様々な事情から代表者が変更になる場合があります。代表者が変更になると、記名された代表者名が異なりますよね。では、古い契約書が無効となり、新たに締結し直す必要があるのでしょうか。
会社が契約しているので有効
契約は、権限のある人(当時の代表取締役など)が意思表示して締結されるものなので、契約締結の効果は会社に帰属します。つまり、代表取締役が締結したというよりは、その法人が当時契約を締結していたことになるので、代表者変更されても古い契約書は有効です。
■代表者変更の通知が必要な場合もある
ただし、近年反社会的勢力に該当しないかのチェックが厳しくなっており、契約書に代表者変更の通知義務が盛り込まれている場合があります。銀行など、別途代表者変更の届出が必要になる場合もありますので、注意が必要です。
覚書で契約内容を変更する方法
では、新たな代表者の経営方針で、今まで結んでいた契約書の内容を見直すことになった場合はどのようにすれば良いでしょうか。もちろん、取引先から契約内容の変更に同意を得る必要があります。
その上で、先方の理解が得られるようであれば、覚書の締結という形で既存契約内容を変更するのが一般的です。覚書は契約書に比べると重要性の低いものとの誤解もありますが、契約書と同様に大変重要な書類であることをしっかり理解しておきましょう。
代表者以外が契約する方法
ここまで、契約書の効果は法人の代表者が締結することにより会社に帰属することを説明しました。では、代表者以外が契約を締結することはできないのでしょうか。
実務上は代表者以外が押印することもある
契約件数が多かったり、全国各地に拠点を構えている企業であれば、代表者が全ての契約を締結するのは現実的に困難です。そこで、実務的には権限委譲を受けた支配人などの従業員が自身の名義で契約を締結する場合があります。
また、代表者名義で従業員が代理で締結するケースもあります。この場合の権限の正当性については意見が分かれるところではありますが、日本企業の大半がこの形式を取っていることを頭に入れておきましょう。
電子契約なら権限確認がスムーズ
ここまで解説してきたように、契約書の締結は双方の代表者がおこなうのが原則です。しかし、実務上全て代表者がおこなうということは難しく、従業員が代わりに締結する例も多いです。
支配人登記された従業員が自身の名前で契約するのであれば、権限があることがはっきりわかるので相手も安心して契約できます。しかし、代表者以外の従業員が契約する場合、本当に権限があるのか不安になる場合もあるでしょう。また、会社にとっても従業員が代表印を持ち歩くことにリスクを感じるはずです。
電子契約の場合、事前に権限を設定しておくので、誰に権限があるかを明確化できます。契約書締結の不便さを感じているなら、一度検討してみてはいかがでしょうか。