住所は契約の当事者を特定するために欠かせない情報であり、契約書には記載する必要があります。
では、契約当事者の住所が変更になったら、旧住所が書かれてある契約書が無効になるのかというと、そのようなことはありません。
この記事では、契約書の住所が変わったときの対応について詳しく紹介します。
目次
契約書に住所を書かなればならない理由
法人であろうと個人であろうと、契約書には、正しい住所を書くことが求められます。住所変更の手続きを紹介する前に、契約書に住所の記入が求められる理由を解説しましょう。
企業が契約を結ぶときは、契約書の最下段に
*(1)会社住所
*(2)社名
*(3)代表取締役氏名
*(4)実印(会社実印)
を記載することが必要です。
このときの会社住所は、法務局に登記している「本店所在地」(本社の住所)を記載します。
例えば、北海道に本社があり、支店も北海道内にしかない会社の契約書に沖縄県の住所が書かれてあれば、その他の(2)社名、(3)代表取締役氏名、(4)実印が正しいものだとしても、契約書が正規の手続きに沿って締結されたかどうかが疑われるでしょう。
同様に、個人の場合には
*(1)住所
*(2)氏名
*(3)実印
の記載が必要です。
同姓同名の人もいるかもしれませんし、住所も含めて必須項目をすべて契約書に記載することで、契約の当事者を特定できるのです。
従来の契約書の旧住所は変更する必要なし
会社の本社が移転すると、従来の契約書には旧住所が書かれてあることになります。しかし、従来の契約書の旧住所を書き換えたり契約書を結び直したりする必要はありません。ただし、次の章で紹介する「手続き」は行う必要があります。
住所を変更した契約書が不要な理由は、その会社の旧住所は、契約の当事者はもちろんのこと、その会社の関係者は全員知っているからです。
従来の契約書に書かれてあるのが新住所でなくても、旧住所で契約の当事者を特定できます。そうであれば、契約の効力が揺らぐことはありません。
もちろん、念のため新住所を書いた契約書を作成して、相手の当事者と契約書を締結し直しても構いません。その場合、再び印紙代は必要です。
住所を変更したときの契約書の手続きと注意点
住所を変更したときの契約書の手続きと注意点を解説します。
引っ越し案内状を契約書に添付しておく
契約相手の会社が住所変更したら、引っ越しの案内状が届くと思います。引っ越しの案内状には新住所と旧住所が書かれているはずなので、それを、従来の契約書に添付して、一緒に保管しておいてください。
これが最も簡単な手続きです。簡単ではありますが、これで法律的に、契約書の有効性が落ちることはありません。
契約内容の変更に関する覚書(変更契約書)を交わす
引っ越しの案内状は「任意の書類」なので、それでは不安を感じる場合、「覚書」を交わす方法もあります。覚書は「変更契約書」や「変更確認書」と呼ばれることもあります。
覚書には、「A社とB社が○年○月○日に締結した○○契約書の内容について変更する」ことを書きます。そして、本記(条項)に、住所変更があった事実を記入します。
会社の本業に関わるような重要な取引の契約書であれば、覚書を交わしておいたほうが間違いないでしょう。
電子契約書なら住所変更が楽にできる
上述のとおり、自社や契約相手が住所変更しても従来の契約書を最初からつくり直す必要はありません。ただし、総務部や法務部の担当者であれば、どれが旧住所で締結した契約書であり、どれが新住所で締結した契約書であるか、把握しておいたほうがよいでしょう。契約相手の現在住所と契約書の記載住所が異なっていることも管理しておくべきです。
「契約書と住所の関係」のチェック作業は、紙の契約書だと、どうしても管理に手間がかかってしまいます。しかし、電子契約書にすれば、簡単にチェックできます。電子契約書であれば契約内容が、住所を含め、すべてデータ化されているためです。これがITの力であり、作業の効率化が期待できるでしょう。
自社が移転したら、それ以降に作成する契約書には新住所を記載しなければなりませんが、電子契約書システムを導入していれば、住所情報を変更するだけで反映されるので簡便です。
住所変更は電子契約書システム導入のチャンス
自社が移転するとき、それを契機にして電子契約書システムを導入してはいかがでしょうか。
契約書の電子化、IT化の波は止められません。電子契約書の課題は「導入するかどうか」ではなく「いつ導入するか」になっています。
電子契約書システムを導入すれば、会社が移転したときだけでなく、代表者が変わったときなどにも対応できるでしょう。
住所変更による面倒な作業を経験してから「やっぱり電子契約書を導入しよう」と決めるより、面倒な作業を省くために電子契約書を導入してはいかがでしょうか。