せっかく作った契約書、いざ契約締結というタイミングでミスが見つかる…というのはできるだけ避けたいものです。特に金額訂正が増えると、悪意ある改ざんを誘発する恐れもあります。
ここでは、紙の契約書と電子契約書の訂正について解説します。
目次
紙の契約書の訂正には印鑑が必要
紙の契約書の訂正方法は、訂正前の内容がわかるように訂正し、契約書に押印したのと同じ印鑑を用いて契約当事者全員が訂正の押印をします。訂正押印をすることで、その訂正を契約当事者全員が承認し改ざんでないことの証とするのです。
紙の契約書の訂正方法
①(訂正・削除の場合)訂正または削除する文字・数字を二重線で消す
②(訂正の場合)二重線で消した文字・数字の上部に、正しい文字・数字を書く
③(加入の場合)加入する位置に「〈」または「{」記号を書き、追加する文字・数字を書く
※ 数字の場合、例えば「78,500」を「79,500」や「7,850」や「785,000」に訂正する場合には、数字一文字だけを訂正や削除・加入するのではなく、「78,500」全体を正しい数字に訂正します。
④ 訂正・削除・加入した部分近くの欄外またはページ上部欄外に、削除した字数と加えた字数を記入する
同じページに複数箇所訂正・削除・加入があれば、その行数も記入します。
改ざん防止として多角漢数字で「伍行目、弐字削除、参字加入」と表記することもありますが、算用数字「5行目、2字削除、3字加入」でも問題ありません。ただ、漢数字の「一、二、三」は改ざんが容易なため使用しません。
⑤ 訂正印を押印する
訂正印は、契約書本文の訂正箇所(二重線で消した文字・数字に重ねて)または、欄外の「〇行目、△字削除、◇字加入」と記入した部分に押印します。
訂正印は、契約当事者が署名時に押印したものと同じ印鑑を使用し、それぞれの訂正箇所に契約当事者全員による押印をします。
⑥ ①~⑤を、契約書の部数すべてに行う
契約当事者が3名で契約書を3部作成しているなら、3部すべてに同一の作業を行います。
契約書の金額訂正は上記の方法でできますが、契約金額のように契約内容の重要項目の訂正は、できれば新しく契約書を作成する方が良いでしょう。
紙の契約書と偽造のリスク
紙の契約書を訂正するには契約時押印した印鑑が必要…ということは、「その印鑑があれば訂正ができる」とも言えます。契約書の偽造や改ざんは、印鑑の盗難や無断持ち出しなどによって可能となってしまいます。
契約書や印鑑の保管には、細心の注意が必要です。
電子契約書の訂正方法
電子契約書の場合、作成した契約書に契約当事者がそれぞれ電子署名とタイムスタンプを埋め込むことで契約が締結されます。いったんこの工程に入ると、契約書の訂正は、金額に限らず一切できなくなります。
契約内容の訂正が必要な場合は、「訂正の覚書」や「念書」などを追加作成して、契約当事者間での合意を確認します。
電子契約書は改ざんできない
電子契約書は、秘密鍵などの仕組みによる電子署名を埋め込んでしまうとその後の訂正はできません。つまり、偽造や改ざんの余地がないのです。
電子契約を利用することで、改ざん不能な電子契約システムによって、強固なセキュリティのもとクラウド管理されます。
金額のミスを減らす3つのポイント
契約書は、紙の契約書でも電子契約書でも、契約締結までにミスなく作成しておく必要があります。
ビジネス文書の作成ミスの多くは、入力ミスによるものでしょう。
ふだんからよく使うビジネス文書の作成にあたっては、可能な限りひな型を作って、個別に入力する箇所を最小限にしておきましょう。
そのうえでミスを減らすためには、下記の3つのポイントを参考にしてください。
① できるだけ客観的に見直す(できれば複数の目でチェックする)
自分が作成した書類を自分で見直す場合、どうしても思い込みでチェックしてしまいがちになります。「30万」と思って数字をチェックすると「0」が1つ足りないことを見落とすこともあります。できるだけ客観的に、先入観を捨ててチェックしなければなりません。
できれば、作成した人とは別の人によるダブルチェックをするようにしましょう。
② チェックリストを作成しておく
書類を見直す際、漠然とチェックするのではなく、あらかじめチェックポイントを決めておくとスムーズに確認できます。
例えば…
・文書のタイトル(工事請負契約書、売買契約書など)
・相手先の名称(前株・後株、漢字の字体など。名刺など正確なものと照合する)
・日付(作成日、期日など。西暦・和暦など)
・数字(金額、数量など。単位、「,」にも注意する)
特に金額は、万円単位、千円単位のような単位に注意しましょう。「500万円」の場合、「5000千円」とすべきところを「500千円」としてしまうと大変なことになります。
「,」の位置の間違いもありがちなので、注意すべきポイントです。
③ 紙媒体で出力(印刷)して、見直す
パソコンで入力したものは、モニター画面だけでチェックするとミスに気づかないことがあります。紙に印刷してマーカーなどでチェックを入れながら確認しましょう。特に数字や固有名詞は一文字ずつチェックを入れましょう。
チェックする環境を変えることで、ミスを発見しやすくなります。
また、これらをチェックするタイミングを決めておくのも効果的な方法です。
文書を作成した時、資料が一式揃った時、送付する前などのタイミングで、それぞれどのような確認をするかをルーティンとして決めてそれをリスト化しておけば、チェックのし忘れ防止にもなります。