注文書ごとに作成する注文請書は、ビジネスに必要で作成する頻度のかなり高い文書の1つです。
それだけにあらかじめ雛形を作成し、様々な取引先に対応できるようにしておくことは、効率や人件費を含むコストの上でも非常に重要です。
ただ、そんなオールマイティな雛形を作るのは簡単ではありません。そこでこの記事は、注文請書の本来持つ役割や雛形の作成に役立つ項目とその一般的な配置を解説します。
目次
注文請書とはいったいどんなものか
まずは、注文請書とはいったいどのような文書なのかを解説しましょう。
注文請書が受け持つ役割とは
注文請書は注文書と対をなす文書です。
・注文書:注文者が受注者に対して、希望する商品とその数量・納期・納品場所を伝える文書
・注文請書:受注者が注文者に対して、注文書の内容を引き受ける意思を伝える文書
注意が必要なのは、商品名・数量などを含めた注文内容・条件について、注文書と注文請書の両方が同じとは限らないということです。
またどちらも「一方向」に向けた文書であることも重要です。それぞれが希望や意思を一方的に伝える性質を持っており、注文請書は受注者が「この内容なら引き受ける」という意思の証明であるに過ぎないのです。
しかし、注文請書は注文者が確認して了承すれば、契約成立を証明する文書の1つになります。注文請書とは、取引の成立を証明する一部の役割を担う文書であるといえます。
注文請書を運用する際の特徴
注文請書を運用する際、特に作成頻度の高い業種は、法律で定められた次の2点の特徴をおさえておく必要があります。
〇注文請書の保管期間は7年間
注文請書は、国税庁が定める「帳簿書類等の保存期間及び保存方法」に従って保管することが義務とされています。
事業にとって重要な注文書や請求書の保管期間は、法人なら原則として7年です。
ただし、欠損金が生じる年度に関しては最大10年の保管義務が発生する場合があるため、10年間が望ましいとされています。
個人事業主の場合は青色申告・白色申告を問わず原則5年ですが、不測の事態に備える意味でも7年保管するとよいでしょう。
〇注文請書には収入印紙が必要
注文請書は、契約成立を証明する文書の1つであることから、印紙税法上の課税文書に該当し、文書ごとに収入印紙を貼り付ける必要があります。
貼り付ける収入印紙の額面は、取引金額1万円以上100万円未満で200円、100万円以上200万円未満で400円など、取引金額が上がれば額面も上がり、最高で取引金額50億円超で60万円とされています。
注文請書の作成頻度が高い業種においては、法律で定まっているとはいえこのコストはかなりの負担といえます。
ただし、印紙税法は収入印紙の貼り付けを「紙文書に限る」としていることは覚えておいてください。
注文書とセットで法的効力を持つ
注文請書そのものは、注文に対して受注者が一方的に作成・送付する文書であり、単体では取引の存在を明らかに証明することはできません。
架空の注文書をもとに作成された可能性も否定できないからです。
つまり、注文の事実を証明する注文書とセットにすることで、注文請書は法的に取引の存在を証明できるようになるのです。
注文請書の構成を知って雛形を作る
注文請書が明確にする項目は、主に次の3点だといえます。
・注文請書を発行した日付と注文元・受注元
・受注内容とその合計金額
・その他納期や納品場所など
これらを縦に3つのブロックに分けて考えると、一般的な雛形では次のような配置が望ましいとされています。
日付と注文元・受注元
最上部に位置する「日付・注文元・受注元」は、次のように配置します。
・日付:文書の最も上部、右端に配置
・注文元(企業名のみで可「御中」「様」など敬称で記載):「注文請書」の文書タイトルの下段、左端に配置
・受注元(企業名・所在地・電話番号などを記載):注文元のさらに下段、右端に配置して押印
これらは「注文請書が受注元から注文元に向けて」発行されることを考えれば、受注元の素性を明らかに示すこと、押印によって正式な文書であると証明すること、注文元を敬称で記載することの意味は充分理解できるでしょう。
注文内容とその合計金額
中程に位置する注文内容とその合計金額は、「下記のとおりご注文をお受けいたします」といった文章の下に配置します。
まず注文金額合計をアンダーバーで表記します。その下から、商品名や品番ごとに「数量・単価・金額」を表形式で記載し、その下段には必要に応じて「税別金額」「消費税」「合計金額」を表記します。
納期などを記載する備考
最後に文書の下に位置する「備考」には、取引に関するそのほかの必要事項を記載します。
例えば「納品予定日」の後に「ご希望納期よりxx日遅れ xx課xx様了承済み」、「弊社運送便により納品予定」など納品に関する記述や、「納品時集金予定」「買掛金と相殺」といった支払いに関する事項などを明確にします。
電子契約なら作成も保管も簡単に
多くの企業は、注文請書の雛形をパソコンのアプリケーションソフトなどを使って作成していますが、これはあくまで「紙文書作成の手間を削減する」ことに過ぎません。
これをもう一歩進めて「電子契約」を導入すれば、紙文書ではなく電子文書そのものをやりとすることになり、その保管にかかるコストも大幅に削減できる可能性があります。
電子契約はIT技術の進歩によって今や法律でその有効性が認められています。分かりやすい例を挙げると、紙文書ではないため収入印紙が不要で、印紙税をゼロにすることも可能なのです。
これを機会に自社における電子契約のメリットを調査し、ぜひ導入することをおすすめします。