雇用契約書は、企業が労働者との間で雇用契約について定めた書類です。では、契約時に必要になる印鑑はどのようなものを用いれば良いのでしょうか。
印鑑には、スタンプ型印鑑や実印など様々な形式があります。そこで、この記事ではどれが有効なのか、そして一度は悩む印鑑の押し方について解説します。
目次
雇用契約書に必要な印鑑の種類とは
個人が使う印鑑には、実印・銀行印・認印(仕事印)・役職印など様々な種類があります。重要な契約なので、実印などのしっかりとした印鑑を持参しなくてはならないのかと、迷うかもしれません。
そこで、労働者側が雇用契約書に押印するにはどの印鑑が必要かを紹介します。
実印である必要はない
まず、印鑑は実印や銀行印である必要はありません。実印は登記など重要な契約で使用するものであり、銀行印は預金から現金を引き出すためのものです。
重要なものという意識で、これらの印鑑を使用しても構わないですが、むしろ会社への持参時に紛失・盗難のリスクもあるため、あえて持ち出す必要はないでしょう。
スタンプ型印鑑で可能な場合もある
銀行での届出印の場合、スタンプ型印鑑が認められないので、不安に思うかもしれませんが、実は、仕事で使用している認印はスタンプ型印鑑でも問題ありません。これは、労働法上、印鑑に関する規定はないことも理由です。
ただ、会社側が別の印鑑を求めている場合はそれに従うのが良いでしょう。
印鑑なしでもサインがあれば有効
比較的簡単に手に入れることができるスタンプ型印鑑でも有効なのであれば、そもそも印鑑の押印に意味があるのでしょうか。民事訴訟法228条では、私文書において本人の署名又は押印があれば有効とされています。
つまり、印鑑を押していなくても本人のサインさえあればその契約書に法的効力が発生するのです。しかし、日本では依然としてハンコ文化が浸透しています。
そのため、印鑑がない書類だと偽造を疑われ、揉め事のひとつにもなりかねません。雇用契約書においても、原則として印鑑を押印するようにしましょう。
雇用契約書に会社側が必要なこと
雇用契約にあたり、会社側は雇用契約書の準備や労働条件通知書の交付が必要です。これらの書面には、雇用契約の期間・勤務場所・業務内容・就業時刻など、様々な項目を明示しなくてはならないとされています。
また、雇用契約更新の都度、契約書を交わさなくてはいけない点にも注意が必要です。では、会社側はこの雇用契約書にどのような印鑑を押す必要があるのでしょうか。
印鑑の種類に定めなし
雇用契約書は双方が署名捺印する必要があるとされているので、労働者だけでなく、会社側も印鑑を押印しなくてはいけません。会社の印鑑には、すでに紹介している印鑑の種類以外にも会社実印や角印といったものがあります。
上述した通り、雇用契約書の印鑑に定めはありません。これは、会社側も同様ですので、どの印鑑でも有効です。実務上、実印を印刷したもので対応している場合もあります。
〇実印と角印の違い
雇用契約書に押印する印鑑に決まりはないですが、ここで会社の実印と角印の違いをおさらいしておきましょう。
まず、会社実印は正当な代表者により発行された契約書であることを証明するものなので、重要な契約で使われることが多く、代表印ともよばれます。
一方、角印は見積書や請求書など、発行機会の多いもので押印されるものです。四角いハンコといえば、イメージしやすいのではないでしょうか。
印鑑の位置や押し方のポイント
印鑑の種類はあまり気にしなくても良いことがわかりましたが、いざ押すとなると契約という重要な行為なだけに押し方で迷うかもしれません。そこで、印鑑を押す位置や押し方を紹介します。
印鑑を押す位置とは
印鑑の複製や偽造防止のために、署名した場所に重ねて押印しましょう。ただし、印鑑証明書を必要とする契約では、印鑑は重ねてはいけません。
あらかじめ印の場所が表示されている場合であっても、そこに押す義務はありません。しかし、会社側はそこに押すのを望んでいるのですから、それに従って押すのが無難でしょう。
印鑑の正しい押し方
緊張することもあって、いざ押すとなると印鑑は綺麗に押せないものです。まず、大前提として平らな場所で押すことを心がけましょう。
スタンプ型印鑑でない場合は、朱肉のつけ過ぎに注意が必要です。人差し指・親指・中指の3点でしっかり支え、紙に対して垂直に押せば綺麗に押印できます。
電子契約なら契約の印鑑も省略できる
雇用契約書に押印する印鑑に特段定めはなく、スタンプ型印鑑でも使用可能なことがわかりました。しかし、実際に押すとなるとどれを使うか悩むでしょうし、印鑑や重要書類の紛失リスクも増えます。
そこで、近年は雇用契約書も電子化の流れが進んでいます。この方法であれば、物理的に印鑑を押す必要がなく、コストや手間も削減できるでしょう。
雇用契約書の手続きで悩んでいる経営者や人事の方は、電子契約システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。