雇用主が労働者を雇用する際、両者の間で書面で契約を交わします。その際に使用されるのが、「雇用契約書」です。
雇用契約書には明示すべき項目が多数あるため、雛形の使用が便利です。
今回は、雛形の活用方法を雇用契約書の作成ポイントと共に紹介します。
目次
雇用契約書作成には雛形の活用が便利
労働基準法で定められた内容をすべて明示しなければならない雇用契約書ですが、一から作成するにはなかなかの手間がかかります。そこで便利なのが雛形です。雇用契約書に盛り込むべき必要項目と合わせて、雛形の活用について解説します。
雇用契約書に必要な項目とは
雇用契約書を作成する際、必ず盛り込まなければならない項目があります。労働基準法では、必ず雇用する労働者に労働条件や労働時間を明示する必要があると定められており、中でも賃金は必ず書面で明示する必要が出てきます。
雇用契約書で明示すべき項目は、大きく分けて2種類あります。ひとつが書面で明示しなければならない「絶対的明示事項」、もうひとつが各企業で該当する場合に明示する「相対的明示事項」です。
このうち、相対的明示事項については口頭での明示も認められますが、トラブル予防のために書面で残しておいた方がいいでしょう。
必ず雇用契約書に盛り込むべき絶対的明示事項には、主に以下の項目が該当します。
・労働契約期間
・就業場所
・業務内容
・始業時間、終業時間
・所定労働時間を超える労働(残業)の有無
など
相対的明示事項には、昇給や休職制度、賞与や退職制度の有無などが含まれます。
無料で使えるワード・エクセル形式の雛形も
労働基準法で定められた絶対的明示事項をすべて盛り込みながら、一から雇用契約書の文面を作成することは容易ではありません。
自社で雇用契約書を作る際は、テンプレートを活用するとスムーズです。雇用契約書の雛形として、さまざまなテンプレートがインターネット上で無料公開されています。
ワード形式が多く見られますが、中にはエクセル形式で作成できるファイルも公開されているので、使用するソフトに合わせて雛形を選びましょう。
〇厚生労働省と労働局に雛形はないので注意
厚生労働省や労働局は、労働に関する環境づくりなど労働に関する業務を行うところです。雇用契約書の雛形も取り扱っていると思われがちですが、いずれのサイトにも雇用契約書の雛形は存在していません。
その代わり、雇用契約を結ぶ際に用いられる「労働条件通知書」の雛形は厚生労働省のホームページで公開されています。
各地の労働局のホームページにも、厚生労働省のダウンロードコーナーへのリンクが用意されているので、労働条件通知書を作成する際には、厚生労働省が作成した様式を活用できます。
雇用形態によって雛形を使い分けよう
正社員とパート・アルバイト、臨時雇用など雇用形態が異なる場合、雇用契約書の内容も変わってきます。
そのため、雛形を使う際は、雇用形態に合わせて使い分けましょう。
雇用契約書作成で押さえておくべきポイント
上記のように、雇用契約を結ぶ際に使用する雇用契約書は、すべて同じ雛形を使用できないケースがあります。雇用形態や勤務形態によって明示するべき項目が変わってくるため、それぞれの契約に適した書面にするためには、以下に挙げるポイントを押さえておくべきです。
最も一般的な正社員の雇用契約書
正社員向けの雇用契約書は、使用される頻度も高いことから一般的な雛形といえるでしょう。パートやアルバイトから正社員雇用となる場合も、この雛形が使用されます。
正社員での雇用は基本的に無期雇用ですが、試用期間が設けられることも多いのではないでしょうか。試用期間がある場合でも有期雇用ではないため、試用期間がある契約では必ず無期雇用とした上で、「○カ月は試用期間とする」などの文言を付け加えなければなりません。
さらに、試用期間後に正式採用とならないケースに備えて、正式採用をしない可能性も明示する必要があります。
雇用契約書の絶対的明示事項には業務内容が含まれていますが、途中で業務内容が変更となるケースも少なくありません。そのため、業務変更の可能性についても雇用契約書に盛り込みましょう。
フレックスタイム制などの労働時間制度に注意
絶対的明示事項には始業時間と終業時間がありますが、正社員には労働時間や始業・終業時間を自分で決められる「フレックスタイム制」や、あらかじめ労働時間を決めておく「裁量労働制」という働き方があります。これらの働き方で雇用する場合は、雇用契約書の内容も変わってきます。
フレックスタイム制または裁量労働制の場合は、必ず雇用契約書にその旨を記載しなければなりません。フレックスタイム制の場合は、必ず出社しなければならない時間「コアタイム」、出勤と退勤が自由な時間帯「フレキシブルタイム」の記載も必要です。
パート・アルバイトで明示するべき項目とは
パートやアルバイトの雇用契約書では、先述の絶対的明示事項と相対的明示事項に加えて、有期・無期雇用の別、更新がある雇用契約の場合は更新のための判断基準も明示しなければなりません。さらに、昇給や退職手当、賞与の有無と窓口について明示する必要があります。
雇用形態に応じた雛形を使おう
雇用契約書は、雇用形態によって必要な項目が変わってくることに加え、フレックスタイム制のような労働時間制度によっても加えるべき項目が出てきます。雛形を活用する際は、雇用形態はもちろん各々の働き方に合わせて使い分けましょう。