法律が認めている印章の効力について|4つの印章とその取り扱い

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法律が認めている印章の効力について|4つの印章とその取り扱い

ビジネス上使っている印章、つまり印鑑には多くの種類があります。スタンプ台のいらないシャチハタ印や、数多い手書きから解放してくれるゴム印、丸形や角形の認印は、なんとなく区別して用いられていますが、本来法律はその効力をどう定義しているのでしょうか。

 

この記事は、これら4つの印章とそれによる印影がどのように取り扱われるのかを解説します。

 

印章は書類の信用性を表している

日本で暮らしていれば、印章やそれによる押印・印影はなじみの深いものですが、本来それらは何のために用いられるのでしょうか。

 

印章の一般的な法律上の役割

日本人は何かと押印する習慣があり、どこか「重要な文書を作るには印鑑を押すものだ」といった共通認識があります。しかし、ほとんどの場合特別な法的効力が発生するわけではなく、本来印章の押印それ自体に法的意味はありません。

印章も同様で、あくまで押印された文書が「間違いなく本人が作ったものである」ことを証明する要素です。そのため、種類を問わず印章がある文書は、ない文書に比べ信用性が高いものとして扱われます。

 

記名と署名の違い

印章による押印と似たものに、「署名」と「記名」がありますが、それぞれ次のように定義されます。

 

・署名:狭義では、自己の名称を手書きすること。広義では記名捺印も含むが、狭義で用いられることが多い

・記名:署名以外の方法で名称を表すこと。ゴム印やスタンプ、プリンターなど機械による印刷なども含む

 

本来文書の作成者を記すものと考えると、記名だけでは本人特有の痕跡が残りにくく客観的に証明するのは困難です。そのため記名に加え印章による押印を併せて用い、その人しか残し得ない特有の痕跡として本人性を証明します。

一方署名は、それだけで本人性をはっきりと証明できるものです。そのため、印章の習慣のない文化圏では、日本で言う印章にあたる証明として用いられています。

 

印章がなくても有効とされる書類がある

例えば、契約書には本来印章による押印は必須とされていません。署名があれば原則としてその取引は有効に成立しているとみなされ、印章による印影があるかどうかではなく、当事者間で間違いなく合意されたかどうかという事実認定が問題とされます。

さらにもし、契約書などがなく口頭やメール・LINEでのやり取りだけで合意されていたとしても、契約は有効に成立します。つまり、何らかの方法で合意が成立していれば、印章による押印などなくても契約自体の成立は認められるということです。

 

法律上の印章の取り扱い

印章が使用されたとき、印章による印影には次のような法的な意味や役割があります。

 

・有力な証拠になる:本人または代理人の署名または捺印のある文書は真正なものと推定されます。つまり印章による印影は本人などの意思に基づいて示されたものとみなされ、ひいては文書の全体が本人または代理人により作成されたと認められます。

・文書を偽造した場合:有印私文書偽造・変造は3ヶ月以上5年以下の懲役、無印私文書偽造・変造は1年以上の懲役または10万円以下の罰金に処せられます。このように処罰の重さに差があることから、印章を使用した文書の偽造・変造の重大さが分かるでしょう。

・遺言は法律上押印が要求される:遺言は遺言者の死後に効力が生じるため、自筆証書遺言の場合本人の意思を確かめる方法として、遺言書に本人の押印が要求されます。

 

印章の種類とそれぞれの法律的効力

一口に印章といっても、使う場面や印章自体にもさまざまな種類があります。ここでは種類ごとの法律的効力について解説します。

 

信用度が低いシャチハタ印やゴム印

シャチハタ印やゴム印は、印影がゴムという素材に依存しています。本人であることを証明することが印影の意義だとすれば、これらが熱や衝撃によって変形しやすいゴム製であることは法的効力の根拠にはほぼならないと言えます。

そのためこれらの印章は、印影と併せて用いられたり、宅配便の受け取りなど簡易であまり信用性の問われないやり取りに用いられたりするのが通常です。

 

認印や企業の角印の信用度は高くない

認印や企業がよく用いる角印はおよそ次のように定義できます。

 

・認印:木やプラスチックなど硬い素材でできている。低価格なものも多く、通常の契約書や申込書などに使われる

・企業の角印:認印と似た素材でできており、四角い印影に企業名が掘り込まれている。契約書や領収書などに用いられる

 

これらの印章の信用度は高くありませんが、変形しにくい素材でできているので本人性を示すものとしては有効です。

 

信用度の高い実印の取り扱いには注意

変形しにくい素材でできている印章を市役所や法務局に登録したものが「実印」です。個人では「印鑑登録証明書」、法人では「印鑑証明書」という証明書と印影とを併せて用いることで、間違いなく本人のものであることを証明できます。

ただし、証明書がなければ実印の印影でも認印と同じです。使う場合は必ず証明書とセットで使いましょう。

 

印章は信用度の高さに応じて使い分ける

いわゆる印鑑である印章は、本来法的な意味を持たない、日本を含む特定の文化圏でのみ使える本人性を示すツールです。さまざまな材質で作られていますが、本来の意義を考えると、変形しやすい材質で作られたシャチハタ印やゴム印よりも変形しにくい印章による印影の方が信頼性は高いと言えるでしょう。最も高い信頼性を持つのは市役所や法務局に登録した実印ですが、そのためには証明書とセットで用いる必要があります。

もし業務をより思い切ってスムーズに進めたいなら、印章を必要としない電子契約を導入する方法があります。電子契約ならさまざまなコストの節減や書類の検索性、保存方法の改善が期待できます。印章の使い方改善を検討するなら、同時に電子契約導入もぜひ検討してみましょう。

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