契約上の権利義務はどう規定されるか|権利義務譲渡規定の重要性

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契約上の権利義務はどう規定されるか|権利義務譲渡規定の重要性

企業など事業者間での契約取引は、継続・反復することを前提に締結されることがよくあります。そうなると事業者にとってその契約は重要な意味を持つことになり、契約書の作成・チェックにも最新の注意を払います。

そのなかで契約当事者同士の権利義務関係はとくに重要で、しかも誤解しやすいといわれます。ここでは契約上の権利義務とは何か、またその譲渡について解説します。

 

契約で明確にされるのは定義と権利義務

契約書に記載される条文のほとんどは、何かしらの「定義」か「権利義務」とされています。まずは権利義務の定義について考えてみましょう。

 

契約における権利義務の定義とは

権利と義務は互いに対義の関係にあり、それぞれ定義は次のとおりです。

 

・権利:自己の意思によってある物事を自由に行うことができる資格や、自己のために利益を主張・享受できる法律上の資格

・義務:道徳または法律上、人がその立場に応じて果たさなければならないこと

 

契約書で権利は「…できる」「…できるものとする」など選択肢の1つであると示されるのに対し、義務は「…しなければならない」「…してはならない」と限定的に示されます。

たとえば教育でいうと、子どもは教育を受ける権利がありますが、その保護者は子どもに教育を受けさせる義務があります。権利義務は立場によって役割や位置付けが変わるのです。

 

契約とは当事者の権利義務を定めること

契約書では、まず前提となる用語や状況について定める「定義」を示し、その前提で当事者どうしの権利や義務を定めます。こうして当事者間の認識の違いを解消し、何のために契約を締結するのかという目的を明らかにして互いの有する権利や負うべき義務を明確にするのです。

 

権利義務をすべての契約条項で規定する

権利義務にまつわる条文は通常、複数必要とします。それは考えられるあらゆる事態を想定し、それにどう対処するかを規定するためです。そのカバー率が高いほど契約をスムーズに遂行することができ、それに伴うトラブルや損失、あるいは訴訟のリスクを抑えることができます。契約書の内容を当事者それぞれが吟味するのは、権利義務関係について公平に認識するために欠かせない手続きなのです。

 

権利義務の譲渡が及ぼす影響

契約取引が長期になるほど環境が変わる可能性は高くなります。たとえば、業績の状態によって他社に経営権利の一部またはすべてを譲ることは充分あり得ます。契約でいう権利義務はどのように譲渡できるのでしょうか。

 

権利は自由に譲渡できる

権利は、定義のとおり「自己の意思によって自由に行う」ものです。それは権利自体についても同様で、他者にも自由に譲渡することができます。先に示した経営権や所有権はその代表で、金銭の貸借においては「貸した金銭を返してもらう権利」も自由に譲渡できるとされています。

 

義務の譲渡には双方の同意が必要

一方の義務は、自己の意思にかかわらず「人がその立場に応じて果たさなければならない」ことですから、その性質上勝手に譲渡することはできません。たとえば「借金を返済する」のは義務ですが、これを譲渡するということは返済の責任を放棄することと同じです。勝手に義務を譲渡できないことはこのことからも明らかです。

ただ、やむを得ない事情を考慮し、権利者との同意の上であれば譲渡できるとされています。

 

あらかじめ権利義務の譲渡規定を設ける意味

とはいえ、いくら権利の譲渡が自由とはいっても、取引によっては円滑な経営という視点から見れば不都合な点も多くあります。そのため、契約書では一般に権利義務についての譲渡規定として、当事者の同意のもとで権利の譲渡を制限する「譲渡禁止規定」を設けます。

 

契約書の雛形には権利義務規定のないものも

通常、新たに契約書を作成するとき、契約書の「雛形(フォーマット)」を元にしますが、その多くに譲渡禁止規定に関する条文がないことには注意が必要です。この規定がなければ権利は自由に譲渡でき、場合によっては不利益を被ることになりかねません。なかには規定されていても当事者の一方だけしか禁止されていないというものもあります。

 

権利義務を丁寧にチェックすることが大切

契約書では、それぞれの当事者の権利義務やその関係が定められます。これは取引についてすべての事象を網羅していることが求められるため、あらゆる場面での権利義務を細かく示す必要があります。そうすることで契約のスムーズな遂行、トラブルにも適切に対処することが可能になるのです。

また、権利義務は原則として譲渡可能なことから、円滑な経営のため譲渡を禁止する権利義務譲渡禁止規定を設けるのが一般的です。無用な不利益を被らないためにも、契約書における権利義務およびその譲渡禁止規定について丁寧にチェックするようにしましょう。

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