契約書を作成する時に、債務負担について条項を定めておくことで、円滑な取引を進められるようになります。とはいえ、債務について知識を深めておかなければ、思わぬトラブルに発展しかねません。
そこで本記事では、債務の概要や状況によって変化する債務と債権の関係について、詳しく説明します。
目次
そもそも債務負担とは
債務負担とは、契約者の一方である債務者が、もう一方の契約者である債権者に対して、契約によって定められた行為や給付を行うことです。
債務者は、契約内容や法律の規定、慣例となっている取引に沿って、債権者に対して義務を果たさなければなりません。債務者の一方的な事情で債務を履行しなければ、「債務不履行」になります。
債権や物権との違い
債権と似た言葉に、「物権」があります。どちらとも権利を有するという点で共通した部分もありますが、債権は人に対して発生する権利であることに対して、物権は物に対して発生する権利のことをいいます。
例えば、賃貸借契約において貸主である物件の所有者は、建物に対して物権を有しています。それを賃借人に貸すことで、物件を借りた人は貸主に対して債務を負うということになるのです。
債務不履行時の損害賠償の取り決め
約束を締結したにも関わらず、債務者が債権者に対して商品の引き渡しをしなかったり、代金を支払わないなど「債務不履行」が発生する場合もあります。
その場合、債務不履行となって債権者に損害が生じたとして、債権者は債務者に対して損害賠償を請求できるのです。
従来は、債権者が債務者側に責任があることを証明しなければなりませんでした。民法の改正によって、債権者は債務不履行があったという事実のみ証明できれば良くなりました。裏を返せば、債務者が自身の責任を否認するためには、債務者自身が責任が無いことを証明しなければならなくなったということなので、注意が必要です。
債務発生状況によって債権と債務の関係が変わる
債務と債権の関係は、債務発生状況によって変わります。契約方法によるこれらの関係性の違いについて理解しておくと、責任の所在を明確にした上で取引を進められるようになるでしょう。
ここからは、債務発生状況による債権と債務の関係性の変化について説明します。
双務契約での債権と債務の関係
例えば車を納品してもらって、その代金をディーラーに支払うという契約では、車を購入する側には車の納品を請求できる債権者でもあり、車の購入代金を支払う債務者でもあります。
その一方で、車を販売するディーラー側は、車の購入代金を請求できる債権者でもあり、車を納入する債務者でもあります。
このように、契約者双方に債権と債務の両方が発生する取引のことを「双務契約」といいます。
多くの売買契約では双務契約になるため、取引の当事者全員が必ず債権と債務を負うことになるのが特徴です。
片務契約での債権と債務の関係
双務契約に対して片務契約では、車を知人に無償で譲渡する場合など、車を譲渡する側は車を納品するという債務を負っても、車の代金を請求するという債権は負いません。
一方、車を譲渡してもらう側は、車の引き渡しを請求できる債権者になりますが、車の代金を支払うという債務を負わないことが特徴です。
相殺する場合の債権と債務の関係
自身が相手に対して負っている債務を、違う取引において相手の持っている債権と合算することで、自身や相手の債務・債権を無くすことを相殺といいます。
例えば、相手に100万円借りていたとして、違う取引としてその相手に100万円で車を売るとします。その場合、相手から借りていた100万円と車の販売代金の100万円を相殺すれば、実際の現金のやり取りなしで取引を終了させられるのです。
相続する際の債権と債務の関係
相続においても、債権と債務の関係が生じます。亡くなった人である被相続人が持っていた債権は、相続を受ける人である相続人が引き継ぎます。また被相続人が持っていた債務は、相続人が引き継ぐようになっています。
被相続人が抱えていたのが債権か債務かによって、相続の対象になる債権が限定されていたり、引き継がなければならない債務の負担方法が変わってきます。そのため、相続時の債権債務の取り扱いについて、事前に対策を取っておくことが大切です。
第三債務者が存在する場合の債権者と債務者の関係
例えば不動産のオーナーが、新たな物件を購入するために金融機関から借りたお金(債務)を、何らかの理由で返済できなくなったとします。この場合、債権者である金融機関は、物件の入居者から得る家賃収入を差し押さえることができます。
ここでの既存物件の入居者のことを、第三債務者といいます。
債権と債務の関係を理解して契約書を作成しよう
本記事では、契約における債務の概要や、契約方法による債務と債権の関係について説明しました。
あなたが契約を締結することによって、債権者と債務者が誰になり、それぞれがどのような責任を負うのかを明確にしておくことで、当事者同士の立場を明確にした上で契約手続きを進められるようになります。
ここで説明した内容を参考にして、スムーズで分かりやすい契約を結べるようになってくださいね。