契約書の約款や利用規約などに違反してしまった場合、どうしようと思いませんか。
主に禁止事項に該当する場合に処分が下されますが、条項や契約が不当だった場合、その有効性が否定されるケースもあります。
今回は約款に違反した場合や不当な条項について解説いたします。
禁止事項
ユーザーがサービスを利用する際、利用規約に同意した上ではじめます。
サービスを提供する事業者はユーザーから同意を得ることによって利用規約に明記されるルールで縛り、それに従って自身も対応することになります。
利用規約で定めなければならない事項の中に「禁止事項」があります。
ユーザーに対して「こういった行為を禁止する」というルールを定めたもののことを指し、設けていない場合は自由にサービスを利用することができてしまうため、トラブルに繋がる危険性が高くなってしまいます。
禁止事項違反の処分
トラブルを回避するために定められる禁止事項ですが、必ずすべてのユーザーが守るわけではないため禁止事項を違反した場合の処分を定めておく必要があります。これを設けておくことで禁止事項が形式だけのものになることを防ぎます。
こういった違反行為に対する処分では制裁処置と違約金支払条項の2点が主に挙げられます。処分内容を明確化することでユーザーの違反行為を抑制する効果が期待できます。
違約金について
契約を解除する際に発生するのが違約金ですが、その詳細な金額やルールを定めたものが違約金支払条項です。
定めることは義務化されていませんが、最低利用期間を設けているサービスでは中途解約の際にユーザーに違約金を請求することがあります。
どのような行為をした場合にどのくらい違約金が発生するのか具体的に定め、ルールに沿って徴収します。
高額すぎる違約金を設定している場合は条項が無効となってしまうこともあるため注意しましょう。
有効性が否定される場合~消費者契約法
高額な違約金など、消費者契約法が適用されることによって有効性が否定される場合があります。詳しく解説いたします。
消費者契約法とは
消費者にとって不利になる契約条項や不当な勧誘から消費者を守るための法律が消費者契約法で、これによって契約が無効になることもあります。商品やサービスに関しては消費者に比べて事業者の方が知識や情報量を多く持っているのが普通であるため、交渉力に差が出てしまいます。その結果消費者にとって不利なまま契約が進められてしまう可能性があります。
そういった状況から消費者を守るための包括的な民事ルールとして平成12年5月に制定されました。
無効の条件
「聞いていた内容と違う」「断り切れなかった」など、消費者が困惑するような勧誘を受けた場合、契約を無効にする取消権を得ることができます。無効になる条件は以下の通りです。
①不実告知
サービスや商品について内容や品質など、事実とは異なる説明があった場合
②過量契約
消費者が必要とする商品の量やサービスの回数を著しく超え、それを事業者が知っていながら事業者が契約をした場合
③断定的判断の提供
金融商品やサービスなど、将来的な変動が不確実な事項について「確実に儲かる」などと確実であることを説明した場合
④不利益事実の不告知
消費者の利益になるということを告げていながら重要な事柄について故意に不利益になる事実を説明していなかった場合
⑤不退去
消費者が帰ってほしいことを伝えていながら営業マンが「契約してもらえるまで帰らない」などと居座って退去しなかった場合
⑥退去妨害
事業者から勧誘を受けている場所から消費者が帰りたい意思表示をしたにも関わらず退去させてもらえなかった場合
違約金の限度額
消費者契約を解除するにあたって発生する損害賠償額や支払いが遅延した際の金額について、消費者契約法で上限が定められています。例えば利用期間1年分に相当する金額が違約金として設定されており、実際の利用期間は3ヵ月だった場合、類似するサービスとの平均的な違約金の額を上回るため、消費者契約法によって超える部分は無効になります。
また、支払いが遅延した場合支払い期日の翌日から支払日までの日数に応じて、残高に14.6%を乗じた金額を超えた分は無効になります。
有効性が否定される場合~定型約款
定型約款においても、消費者にとって不当な契約だった場合有効性が否定される場合があります。
定型約款とは
定型約款とは2020年4月に民法改正され追加された利用規約に関する新しいルールです。
インターネット通販やアプリケーションなど、不特定多数を対象とする取引や定型取引の契約内容とすることを目的としているものを定型約款と定義されます。オンラインでの取引で扱われる利用規約は定型約款とされます。
組み入れ否定
消費者にとって不当に利益を害する条項は組み入れ否定されます。定型約款に不当な条項が含まれている際は、ユーザーが利用規約に同意していた場合でもしていないものとみなされます。
不当条項
組み入れが否定される不当条項の定義は、「消費者の権利を制限、義務を加重するもの」、「信義則に反して消費者利益を一方的に害するもの」とされています。
これを満たす場合は消費者が同意していないものとみなされます。消費者にとって不意打ちとなるような想定外の違約金や制裁措置もこの条項に含まれる可能性があります。
まとめ
利用規約や定型約款の禁止事項に違反した場合、制裁措置や違約金が発生する場合がありますが、消費者契約法によって契約自体が無効になる場合もあります。
また、違約金の上限も定められているため、消費者にとって不利益と感じる場合は一度確認してみることをおすすめします。