定型約款の規定とは?民法改正によって定められた内容を解説

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定型約款の規定とは?民法改正によって定められた内容を解説

定型約款は、2017年に行われた民法改正により新設されたものです。いくつかの規定も同時に定められましたが、「内容についてよく分からない」という方も多いのではないかと思います。

今後約款を取り扱う上で重要な内容のため、詳しく知っておく必要がある内容です。そこで今回は、定型約款の規定について解説いたします。

 

定型約款の定義について

社会において約款取引が必要不可欠であることを踏まえ、民法改正によって定型約款についていくつかの規定が定められました。それぞれ詳しく解説いたします。

 

定型約款の範囲

民法改正によって規定が適用されたのはすべての約款ではなく、定型約款と評価されるもののみです。

定型約款に該当する具体的な例としては、鉄道による旅客運送契約、宅配便契約における運送約款や普通預金規定、インターネット取引における購入約款、アプリの利用規約などです。

定型約款は民法548条の2の規定において、定型取引における定型約款のことを意味します。定型取引とは事業者など特定の者が、不特定多数を相手に交わす取引で、その内容のすべてもしくは一部が画一的であることが双方にとって合理的であるものを指します。

定型約款の範囲は、この定型取引に該当するかで決められます。

 

定型約款の要件

定型約款と定義されるための定型取引の要件についてさらに詳しく解説いたします。

「契約の相手側が不特定多数である」というのは、不特定であることと多数であることをどちらも満たしていることが重要です。労働契約の場合は相手の個性や能力などに着目して行われるため、多数であっても定型約款には該当しません。

また、「契約内容が画一的で双方にとって合理的であること」については、「画一的である」というのは、交通機関やライフラインなど、どのユーザーにとっても同じサービスが受けられることが重要です。

「双方にとって合理的」であるためには当事者間の契約合意で決められる必要があり、一方の都合によって作成された契約書のひな型などは定型約款に含まれません。

 

 

みなし合意の要件と適用除外

合意が有効であるとされる「みなし合意」についての規定はどのように定められているのか解説いたします。

 

成立の要件

みなし合意が成立するための要件は、定型約款を契約内容であると合意したということと、定型約款を準備した者が定型約款を契約内容にするということを相手方に表示したことのいずれかを満たす必要があると定められています。

みなし合意の成立は抽象的なもので、個別の条項について了解を必要としないことや取引自体の合意の後に約款による取引が合意されても成立します。また、あらかじめ準備された約款の内容が表示されていることについては、具体的な表示方法がポイントになります。ウェブサイトの場合、契約が締結される画面までに同一画面上で約款による取引が行われることを認識できるようにしておく必要があります。

 

適用除外について

みなし合意が適用除外される場合もあります。みなし合意のルールが厳しくなりすぎると約款のメリットがなくなってしまいますが、不当な約款の条項が生まれてしまうリスクもあります。

除外される対象は、不当に契約相手の権利を制限したり義務を課したりする不当条項と、取引慣行や社会通念などと照らし合わせた際に想定することができない内容によって相手が不利益を被る不意打ち条項です。具体的に「どのような場合であっても解約や返品を認めない」といった条項や「不要なメンテンナンス費用の請求」などがこれに当たります。

 

表示義務と変更の要件

表示義務についての規定も定められています。

 

表示義務

ほとんどの場合、消費者側は約款の内容をすべて確認することなく取引を進めています。また、みなし合意を成立させるためにはすべての条項を表示させる必要がありません。しかし実際の契約取引においてどのような条項が存在するのか、すべてを確認できるよう環境を整えておくことが548条の3の規定で定められています。

開示方法については消費者側の事情に充分配慮する必要があります。消費者がインターネットを使えない環境にある中でウェブサイトでの公開のみに設定している場合、表示義務を果たしていない可能性が高くなるため注意しましょう。

 

変更が認められる要件

すでに締結された契約を変更するためには双方の合意が行われることが原則とされています。また、定型約款は不特定多数との取引でのみ適用されるため、事後変更は現実的に不可能であるといえます。また、約款を準備した者が優位な取引であることを踏まえると事後変更自体が公平なものではありません。

しかし、やむを得ない理由から変更する必要性が生じるケースもあるため改正民法では変更が認められる要件についても規定されています。「消費者側の利益にも合致している」場合と、「当初の目的に反せず変更の必要性や内容の相当性があり、変更する可能性が約款に明示されていて事情も踏まえて総合的に判断し合理的である」場合、変更が許容されます。変更する場合、消費者側に周知しなければならず、十分に行われない場合は無効になる可能性があるため注意が必要です。

 

まとめ

民法が改正されたことにより、約款について定型約款の規定が定められ、これまで曖昧だった約款の取り扱いが明瞭になりました。

しかし約款の強みを活かすため、規定は抽象的なものとなっています。約款取引を行う際に不安なことがあるという場合は、早い段階で専門家に相談してみましょう。

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