2017年に行われた民法改正により定型約款が新設されました。それにより、不当条項の内容も規定されました。
しかし、不当条項がどのようなものなのかよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、定型約款の不当条項がどのようなものなのかについて解説いたします。
民法改正
まずはじめに、2017年に改正された民法とその際に新設された定型約款について解説いたします。
2017年に改正民法が成立
約款は、個別に契約内容を決めるコストや手間を省くために用いられています。
しかし、取引条件について小さく表示されているため、利用者が気付かずにトラブルになってしまうというケースが多く発生していました。
これまでの民法は120年前に制定されたものであり、約款についての規定は存在しませんでした。そのため、時代の流れに合わせて民法が改正されました。
どのような場合に有効であり、どのような場合に変更が可能かなどについて明記され、消費者に一方的に不利な内容の契約は無効になることなども記されています。
定型約款が新設
民法改正により新設されたのが定型約款です。不特定多数を相手方とする取引で、内容の一部が画一的であることが両方の当事者にとって合理的であるものを定型取引と定義し、定型取引の契約内容として特定の人物によって用意された条項を定型約款と定められました。
定型約款は、該当する約款と該当しない約款があり、その基準については専門家によっても意見が分かれる場合があるため、今後注視しておく必要があります。
みなし合意について
みなし合意とはなんでしょうか?みなし合意について詳しくご説明します。
みなし合意の要件
みなし合意とは、定型約款において、いくつかの要件を満たせば契約の相手方が定型約款のそれぞれの条項について認識をしていなかった場合でも、個別の条項について合意したものとみなす規律です。
みなし合意の要件として挙げられるのが、一つは相手方が定型約款を契約の内容であるとの合意をした場合です。これを1号合意と呼びます。もう一つが、定型約款を準備した人物が、事前にその定型約款を契約の内容とすることを相手方に伝えていた場合です。これを2号表示と呼びます。
1号合意
1号合意は、定型約款の内容を契約の相手方に提示せずに成立させることができます。そのため、説明する手間や内容を提示する手間を省くことができます。
また、必ずしも書面で合意する必要は要求されません。そのため、口頭やWeb上での合意でも何も問題はありません。
そのほか、1号合意は明示の合意だけでなく、黙示の合意も含まれます。そのため、約款名を特定して合意する必要もありません。
2号表示
2号表示によって行われるみなし合意は、相手方から合意したという反応がなくとも契約が成立しますが、契約を締結する前に表示を行う必要があります。
また、あくまでも相手方に表示をしなければならないため、単に公表している場合はみなし合意として認められない点に注意が必要です。
自社のWebサイトなどで約款の内容がそのまま契約内容になる旨を表示しているだけでは、相手方に表示したことにはなりません。
不当条項規制について
最後に、不当条項規制についてご説明いたします。
民法改正の規律
民法改正により、2つの要件の両方を満たす条項について、みなし合意の対象とせずに、契約内容に組み入れることのできない規律が新設されました。これを不当条項と呼びます。
不当条項の内容として、相手方の権利を制限、または相手方の義務を加重する条項であり、かつその定型取引の態様とその実情、取引上の社会通念に照らし合わせて信義則に反して相手方の利益を一方的に損失させると認められるものが当てはまります。
改正民法は消費者との契約だけでなく、事業者間での契約においても適用されます。
不当条項の条件
相手方の権利を制限し、義務を加重する条項がどのようなものなのかについては、確立した判例法理や明文のない基本原則などを適用した場合と比べて判断されることになります。そのため、明文の規定のみで判断されることはありません。
また、定型取引における契約の締結過程や当事者の属性、定型約款の条項全体を含めて当該条項が不当条項に該当するかどうかが判断される点にも注意が必要です。
定型約款以外の不当条項
民法改正により定型約款に該当する約款に関しては不当条項による規制が新設されましたが、定型約款に該当しない約款については、依然として何も改正されていません。
定型約款以外の約款にて取引をする場合は民法改正前の解釈や判例法理が有効なため、注意が必要です。
まとめ
民法改正により定型約款が新設され、それに伴いみなし合意や不当条項などの規律も定められました。どのような要件を満たすことで、それらの規律に該当するのかどうかについてしっかりと把握しておく必要があります。
消費者と事業者の間だけではなく、事業者間での取引にも該当する点にも注意が必要です。定型約款以外の約款には該当せずに、民法改正前の扱いと同じ扱いになります。