2017年5月に改正民法が成立し、2020年から本格的に施行されます。
これにより120年ぶりに約款についての抜本改正がなされ、瑕疵担保責任についても改正がなされています。
そこで今回は、民法改正により約款の瑕疵担保責任はどのように変わったのかについて解説いたします。
瑕疵担保責任とは
瑕疵担保責任とはどのようなものなのかについて解説いたします。
瑕疵担保責任とは
瑕疵担保責任とは、請負契約や売買契約において、履行された際に引き渡された目的物の品質や種類に関して、契約内容に適合しない場合に発生します。請負人・売り主が注文者・買い主に対して負うことになる責任であり、債務不履行にて生じる責任の一つに数えられます。
瑕疵担保責任が発生する状況
瑕疵担保責任が発生する状況として、注文者・買い主が請負人・売り主に対して
履行の追完請求
損害賠償請求
報酬減額請求
代金厳格請求
契約解除の権利行使
これらのいずれかの行為が行われた場合に発生します。
瑕疵担保責任の大幅な見直し
2017年に民法改正が行われ、瑕疵担保責任についても大幅な見直しが行われました。民法改正によってどのような点が見直されたのかについて解説いたします。
民法改正が行われた
2017年に120年ぶりに民法改正が行われ、瑕疵担保責任についても大幅な見直しが行われました。売買における売り主の瑕疵担保責任が全面的に見直されたため、契約書においても見直された内容を反映させて契約条項を定める必要があります。
契約不適合への変更
改正された民法の中では「瑕疵」という文言は使用されていません。そのため、契約書上にても「瑕疵」ではなく「契約不適合」や「契約の内容に適合しない」などの文言を使用する必要があります。
契約不適合責任への変更点
瑕疵担保責任から契約不適合責任へと変更されたことで、新たに規定されたポイントについて解説いたします。
法的性質
民法改正前は、瑕疵担保責任の法的性質には2つの見解がありました。法廷責任説と契約責任説です。
法的責任説とは、民法上の瑕疵担保責任は法によって定められた責任であり、債務不履行責任とは別の責任であるとする見解です。対して契約責任説は、民法上の瑕疵担保責任は売買や請負における債務不履行による責任であるとする見解です。
民法改正前はこの2つの見解が対立しており、法的責任説の方が有力な見解として扱われていました。しかし、民法改正により瑕疵担保責任は債務不履行による契約責任であると定められました。これにより、瑕疵担保責任にいくつかの新たな見解が生まれています。
先述にもあったように、「瑕疵」という文言は使われずに「契約不適合」という文言になりました。その他に定められた規定は以下の通りです。
特定・不特定物を問わずに契約不適合責任の規定が適用される
契約履行時までに生じた契約不適合について責任を負わなければならない
責任が発生する状況は「契約解除の権利行使」と「損害賠償請求」の行為が行われた場合のみだったが、「履行の追完請求」「報酬減額請求」「代金厳格請求」が行われた場合でも責任が発生する
売り主は買い主があらかじめ認識していた不備についても、契約不適合責任が発生する
以上のような規定が民法改正後に変更されました。これらの規定を踏まえると、契約不適合責任は瑕疵担保責任と比較した際に、売り主側の責任がより重くなったといえます。
権利行使の期限
民法改正前は、瑕疵を理由とする損害賠償請求などの権利行使の期限は、買い主が瑕疵の事実を認識してから一年以内に行わなければなりませんでした。しかし、民法改正後は契約不適合を理由とする権利行使について、買い主が契約不適合を認識してから一年以内に通知を行う必要があることのみにとどまり、権利行使については期限が設けられていません。ただし、会社間での売買などの場合は、商法が適用されるため、商品の引き渡し後の6ヶ月以内に通知を行わなければならず、注意が必要です。また、売り主による契約不適合が重大なもの、もしくは悪意のあるものであった場合は、通知に関しても期限が設けられていません。
適用範囲
契約不適合責任は、民法改正前の瑕疵担保責任と同様に適用されます。ただし売買以外の有償契約においても、その性質がこれを許さない場合は適用されません。これらは強行法規に違反しない限り、双方の当事者の合意があれば修正を加えることが可能です。
まとめ
瑕疵担保責任は、民法改正により契約不適合責任へと変更されました。それにより新たな規定が定められたことで、責任の範囲などが改正前と異なるため注意が必要です。特に売り主の場合は、責任の割合が大きくなったため、どのような点が変更し追加されたのか、しっかりと確認をしておきましょう。
契約書を作成する際にも、民法改正によって定められた規定にしっかりと対応した条項を記載するように注意をする必要があります。