2020年4月1日に施行された民法改正で、契約等に関する内容が改定されました。それにともない要物契約に該当する契約の種類が変更されています。
そのため要物契約に携わっている方にとっては、「要物契約の種類はどう変更になったのか?」「要物契約に該当する契約は?」などは非常に気になるポイントでしょう。
この記事では、要物契約の種類についてご紹介します。
民法改正前後での要物契約の種類の変更点についても解説しているので、ぜひご一読ください。
民法改正前後で要物契約の種類が変わった
結論から述べると民法改正によって要物契約は諾成契約化されました。その詳細について、早速見ていきましょう。
要物契約から諾成契約化している
2020年に施行された民法改正により、要物契約の内容に大きな変更が加えられました。
民法をより分かりやすく、日本の社会や経済情勢に対応させるためには、契約がしやすい諾成契約化を進めることが大切です。
諾成契約は要物契約よりスムーズに成立するため、契約を交わす時には要物契約、諾成契約のどちらに該当するのか判断する必要があります。
〇要物契約とは
要物契約とは、両当事者の合意だけではなく、目的物の引き渡しによって成立する契約です。「ようぶつけいやく」と読み、践成契約や実践契約ともいいます。
消費貸借や使用貸借、寄託契約など、物やお金を扱う契約の際に使われます。
〇 諾成契約とは
諾成契約とは、両当事者の合意の意思表示のみで契約が成立する契約です。「だくせいけいやく」と読み、先ほどご紹介した要物契約よりも比較的手軽に契約が成立します。
日本の民法では、契約の自由が原則としてあるためほとんどが諾成契約です。要物契約と諾成契約は契約の種類を語る上ではセットで使われることが少なくありません。
要物契約の種類は民法改正でどう変化したのか
民法改正前は以下の4つが要物契約として定められていました。
・消費貸借
・使用貸借
・寄託
・代物弁済
民法改正で、消費貸借以外は要物契約から諾成契約に変更されました。消費貸借は改正後も要物契約が基本ですが、書面による両当事者の同意が確認できれば諾成的消費貸借が認められます。
では詳しく見ていきましょう。
消費貸借
消費貸借は、借主が種類や品質、数量が同じ物を返還することを約束し、物やお金を借りるために結ぶ契約です。
消費貸借はお金や物を受け取ることによって成立するため、要物契約に分類されていました。
しかし民法の改正後は、基本を要物契約としつつも、条件によっては諾成的消費貸借契約が認められるようになったのです。
諾成的消費貸借契約を行うには、お互いの同意だけでなく、書面によって契約をする必要があります。
使用貸借
使用貸借とは、借主が貸主に無償で物を借り、使用した後に返還することをいいます。家族や友人などの身近な間柄で行うことが多いかもしれません。
使用貸借は目的物の受け渡しによって契約が成立する要物契約とされていましたが、今回諾成契約に改定されています。
これまでも合意のみによる契約が多くありましたが、これは裁判などによって目的物を貸すことを要求する権利を認める必要がなかったからです。
契約が終了した時に受け取った目的物は返還することが義務付けられています。
寄託
寄託とは、目的の物を預かり、保管することをいいます。銀行への預金やコインロッカーの使用などが該当するでしょう。
寄託契約は要物契約と規定されていましたが、民法の改正により諾成契約へと変更されました。諾成契約化したことで、寄託物を引き渡す前であれば、契約を解除できると定められています。
しかし、解除に伴って損害が生じた場合は、損害賠償請求をされる可能性があるため注意しましょう。
代物弁済
代物弁済とは、両当事者の契約に基づき、引き渡した目的物とは異なる他の物で返還することをいいます。
要物契約であった代物弁済は、民法改正で諾成契約によって成立すると変更されました。実務上、代物弁済の予約や担保の目的で取引されることが多いため、今回改定したと思われます。
ただし、当然ですが弁済の際には物の引き渡しが必要です。そうすることではじめて弁済が完了すると明確に規定されています。
要物契約の変化を正しく理解しよう
この記事では、要物契約の種類についてご紹介しました。
これまで要物契約には、消費貸借や使用貸借、寄託、代物弁済がありました。しかし民法改正により、上記の要物契約のほとんどが諾成契約に改定されています。
消費貸借のみ、要物契約を基本としつつ、口頭での約束ではなく、書面で契約をする場合は諾成的消費貸借契約が認められました。
書面は両当事者の合意が表れていればよく、電子契約などの電磁的記録による書面でも契約の成立が可能です。この機会に電子契約への移行を検討されるのはいかがでしょうか。