「保証契約」というと、賃貸借契約や雇用契約を結ぶ際の連帯保証をイメージする人が多いのではないでしょうか。
2020年4月に民法が改正され、保証契約についても新たなルールが定められました。
本記事では、まず、どのようなケースの保証契約であれば印紙が必要なのか、印紙の要否の観点から説明します。
次に、民法改正による新ルールについて説明していきます。民法改正への対応に漏れが生じないように、この記事を参考にしてください。
目次
保証契約とは
そもそも保証契約とはどのような契約のことでしょうか。また保証契約は、印紙が必要な課税文書にあたるのでしょうか。
保証契約は第13号文書にあたり印紙が必要
保証契約とは、ひと言でいうと「債務の保証に関する契約書」のことです。
例えば、AさんがB銀行からお金を借りる際に、知人Cさんに連帯保証人になってもらうと仮定します。この場合に、B銀行とCさんの間で結ぶ契約を保証契約といいます。
保証契約が締結されると、主な債務者(このケースではAさん)の返済が滞ったときに、保証人(このケースではCさん)が返済義務を負います。
保証契約は口約束では法的効力がなく、書面上で署名がなされたときに初めて効力が発生します。そして、この保証契約は、第13号文書にあたり印紙が必要です。
債務保証の6つの種類
債務保証には、主に次のようなものがあります。
・連帯保証
・共同保証
・根保証(信用保証)
・賠償保証
・求償保証
・副保証
このなかでよく目にするものは、連帯保証と根保証(信用保証)でしょう。
連帯保証とは、一般的な保証より保証の範囲が広く、主債務者に代わって督促を受けるなど責任の重い保証のことをいいます。
実社会のなかで求められる保証の多くは、この連帯保証です。
根保証(信用保証)とは、主債務者の一切の債務を将来に渡って保証することです。
保証人は、非常に重い責任を長きに渡って負うことになります。
債務保証には様々な種類があるので、よくわからずに契約書に署名すると、知らないうちに大きな負債を背負う可能性があります。
当然のことながら、保証人になる場合は、よく内容を理解する必要があるといえるでしょう。
印紙のかからない保証委託契約書とは
先述した例文で説明すると、主な債務者であるAさんと知人Cさんの間で結ばれる契約のことを保証委託契約書といいます。
この契約書のなかで、Cさんはその債務の保証を行うことをAさんに約束します。この保証委託契約書は、課税文書にはあたらないため印紙は必要ありません。
印紙のかからない保証契約の記載内容とは
保証契約のなかでも、身元保証に関する契約書は非課税文書にあたり印紙税がかかりません。
身元保証とは、雇用関係に基づく使用者と被使用者との間において、被使用者の行為によって使用者が何らかの損害を受けた場合に、身元保証人がその損害を賠償することを約したものです。
民法改正による保証契約の新ルールとは
賃貸借契約や雇用契約などを結ぶ場合、企業はリスク回避のために、個人を連帯保証人とする保証契約を結ぶのが一般的です。
保証人のなかには、保証の責任の範囲や期間を十分に理解しないままに引き受けたことで、多額の負債を背負い生活が破綻するほど追い詰められるケースも多々起こっていました。
今回の民法改正では、保証人を保護するための新たなルールが定められています。次に詳しく説明しましょう。
保証人の意思確認が必要
改正民法の新ルールでは、事業のために融資を受ける際に、事業に関わりのない第三者が保証人となるときには、きちんと保証の内容を理解していることを証明しなければならないと定められました。
この新ルールにより、公正証書による保証人の意思確認が必要となっています。
ただし、経営状況を知り得る人が保証人となる場合は例外となり、公正証書による意思確認は必要ありません。
保証人への情報提供の義務化
事業のための貸金債務の場合、主たる債務者や債権者は、保証人に対して次の情報を提供する義務を負います。
このことにより、保証人は保証内容をきちんと把握することができます。
・財務や収支の状況
・主たる債務以外の債務の有無やその金額
・主たる債務の元本、利息、損害賠償など
・主債務者の「期限の利益」の喪失
保証契約の極度額(上限額)の設定
改正民法では、個人根保証契約を結ぶ場合には、書面または電磁的記録により極度額を記す必要があると定めています。
つまり、極度額を定めていない契約は無効ということです。
さらに極度額の表記も具体的な数字でなければいけません。例えば「家賃4カ月分」というような曖昧な表記は認められないということです。
保証契約を電子化して印紙代を削減しよう
保証契約は、電子データで作成したものも法的に有効です。作成から締結までネット上で行えるので、押印のためのやり取りや文書の郵送などの手間も時間もかかりません。
また、電子データで作成された文書なので、課税文書に該当せず印紙代も削減できます。
このようにメリットの多い電子契約システムは、今後も普及が進むことが予想されます。
この機会に、電子契約システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。