契約書は、一定期間保存が必要な書類です。
しかし、電子契約を有効にするための電子署名とタイムスタンプの有効期限は、それぞれ5年、10年となっており、10年を超える契約には不十分です。
そこで、電子契約で10年以上の契約を有効にするために必要不可欠な「長期署名」の基本情報について解説します。
目次
契約書の保存期間と電子署名の有効期限
契約書は、契約締結後どの程度の期間保存しておくべきなのでしょうか。目安となる保存期間は、法律で定められています。
契約書は最低でも7~10年保存が必要
取引先などと締結した契約書は、契約を交わしてから一定期間保存しなければなりません。契約書の種類によって法律で定められた保存期間が異なりますが、法人税法では最低でも7年間の保存が求められます。
しかし、会社法では契約書の保存期間は10年と定められています。このことから、契約書は最低10年間保存しておくべきといえるでしょう。
電子署名の有効期限は一般的に5年
前述の契約書の保存期間は紙と電子契約書いずれの場合も同様なので、電子契約書も10年間は保存しなければなりません。しかしここで問題になってくるのが、電子契約書に法的効力を与える「電子署名」の有効期限です。
電子署名法では、電子署名の一般的な有効期限が「5年」と定められています。つまり、契約書に求められる保存期間中に有効期限が切れてしまうのです。
タイムスタンプ付与で有効期限は10年に
電子契約書に付与した電子署名は、そのままでは保存期間の途中で有効期限が切れ、法的効力が失われてしまう恐れがあります。電子署名の有効期限を最低保存期間の10年に延ばして電子契約書の効力を保存期間中維持するためには、「タイムスタンプの付与」という方法があります。
記録された時刻にその電子契約書が存在していたという「存在証明」、その時刻以降に改ざんされていない「非改ざん証明」を証明するタイムスタンプの有効期限は、10年と電子署名より長く、電子署名とともに付与すれば有効期限が長い方が適用されます。これにより、電子契約書の保存期間の10年間、効力を持たせることが可能です。
有効期限が切れた電子契約はどうなる?
電子契約書は、電子署名のみの場合は5年、タイムスタンプも付与された場合は10年の効力があります。では、いずれも有効期限が切れてしまった場合の電子契約はどうなるのでしょうか。
電子署名とタイムスタンプの有効期限は、正式な文書として効力が検証できるものです。これらの有効期限が切れてしまった電子契約書は、当然ながら法的効力が弱くなってしまいます。
10年以上の電子契約を締結するには
電子署名より長い有効期限を持つタイムスタンプでも、10年を超える契約では途中で効力が失われてしまいます。電子契約で10年以上の長期間の契約を締結するためには、どのような方法を取るべきでしょうか。そのポイントとなるのが、「長期署名」です。
長期署名が必要不可欠
電子契約書を用いて10年以上の長期間の契約を締結するためには、一般的な電子署名やタイムスタンプでは有効期限が足りなくなってしまいます。
しかし、10年を超える長期間の契約は電子契約では不可能というわけではありません。電子署名の効力を延長する「長期署名」を使えば、10年以上有効な契約が締結できます。
長期署名の仕組みとは
通常、電子契約では電子署名とタイムスタンプを付与します。このままでは、最長10年までの効力しか持たせられません。そこで、長期署名を用います。
長期署名は、既存の電子契約書に最新の電子署名と「保管タイムスタンプ」を付与することで、電子署名の有効期限を延長するものです。
電子契約書の2つ目のタイムスタンプにあたる保管タイムスタンプを使い、最新の暗号技術で暗号をかけなおします。電子契約書をさらに長期間保存したい場合は、保管タイムスタンプを追加すれば有効期限を延ばせます。
長期署名の標準規格は3種類
長期署名の技術により、10年を超える有効性のある電子契約が可能となりました。この仕組みには、以下に挙げる3種類の国際標準規格があります。
・XAdES
XML形式の電子署名に対応している規格です。JPEGやPDFなど、対応ファイルの種類が豊富で、複数ファイルにまとめて付与できます。一方で、署名の検証環境が限られている、複数ファイルで構成されていることから管理が難しいというデメリットもあります。
・CAdES
CMS形式の電子署名に対応しています。XAdESと同様に対応ファイルの種類が多いというメリットと、管理が難しいというデメリットを持っている規格です。
・PAdES
最も新しい長期署名の国際標準規格で、PDFファイルのみに対応しているのが最大の特徴です。PDFファイルに組み込まれているため、PDF単体で検証が可能ですが、PDF以外のファイル形式で使用できない点がデメリットといえます。
10年を超える電子契約では長期署名を行おう
長期署名を利用すれば、10年を超える電子契約が可能となります。さらに、保管タイムスタンプを追加すれば、15年、20年と有効期限を延ばすことも可能です。
電子契約で10年以上の長期契約を結ぶ際は、国際標準規格の種類とともに長期署名の基本を押さえておきましょう。