賃貸借契約には普通借家契約と定期借家契約の2種類があり、期間をどう定めるかによって使い分けます。
契約期間が決まっている定期借家契約でも期間延長は可能ですが、その場合は契約上「覚書」が必要となるのです。
目次
賃貸借契約は種類で期間が異なる
賃貸借契約には2種類あり、それぞれで契約期間が異なります。まずは2つの賃貸借契約の特徴と違いを見ていきましょう。
普通借家契約
一般的な物件で最も多いのは、普通借家契約です。最低1年以上の契約期間が必要となり、1年未満では「期間の定めのない契約」となります。
一般的には2年以上の契約とするケースが多く、契約期間は更新可能です。入居者から更新希望があった場合、貸主は拒否することができません(正当な事由があった場合を除く)。
〇期間内の解約には違約金が発生する
普通借家契約の場合、期間満了前の退去は中途解約となり、貸主は違約金の請求ができます。違約金の額は貸主が自由に決められますが、相場としては家賃の1~2カ月分といわれています。
定期借家契約
定期借家契約は、契約期間を明確にした契約となります。期間は双方が合意すれば自由に決められるため、期間を「1カ月」とした契約も有効です。
定期借家契約の場合は、契約期間が満了した時点で契約が自動的に終了します。契約更新はできず、貸主は契約終了時点で入居者に物件の明け渡しを請求できます。
しかし、定期借家契約の場合、契約期間について双方が合意している必要があります。貸主は公正な証書によって契約期間を明記して、期間が満了となればすぐに物件を明け渡すことを説明しなくてはいけません。
万が一、貸主が説明を怠っていた場合は契約期間が満了しても明け渡しを要求することはできず、普通借家契約と同じ扱いとなります。
床面積200平方メートル未満の居住用物件の場合のみ、正当な事由があれば期間満了前の中途解約も可能です。
〇賃貸借契約期間に上限はあるのか
定期借家契約の場合、いつ締結した契約であっても契約期間の上限はありません。10年や20年以上とした契約期間であっても認められます。
しかし、普通借家契約の場合、契約を締結した時期によって上限が変わります。「2000年3月1日」より前に契約した場合は、上限が20年となります。しかし、2000年3月1日以降の契約であれば、定期借家契約と同様に期間の上限はありません。
定期借家契約期間は延長できる
あらかじめ期間を定めて契約する定期借家契約ですが、入居者の事情によってはその期間を延長したい場合もあります。その場合契約期間の延長はできますが、注意点も存在します。
民法上期間の「更新」はできない
定期借家契約の場合、借地借家法第38条の取り決めによって契約の更新はできません。しかし、契約期間を延長することは認められています。
契約期間を伸ばしたい場合、契約の当事者双方が合意していれば「延長」という扱いになります。
賃貸借契約期間の延長には覚書が必要
事前に期間を定めた賃貸借契約を延長する場合は、契約内容を変更することになります。この場合、新たに契約を取り交わすわけではないため、新規での契約書は必要ありません。
しかし、契約内容を変更した場合は「覚書」として文書に残す方法が一般的です。
契約とは双方の合意があれば成立するため、口約束も含めどのような形式であっても法的な拘束力が発生します。しかし「言った言わない」の水掛け論を防ぐためには、書面で残しておくのが最も賢明な方法です。
覚書とは大事な内容を記録しておく文書ですが、契約書の内容を変更した場合や補足が発生した場合によく利用されます。もし、定期借家契約の期間を延長する場合も、備忘録として作成することでトラブル防止となるのです。
覚書は契約書よりも簡単な形式で済みますので、以下の内容が明記されていれば問題ありません。
・表題を記載して、何の契約に対しての変更なのか
・契約内容のどの部分を変更するのか
・契約内容の変更が発生した日
・署名捺印
契約期間を延長する場合は、「××契約変更契約書」などとわかりやすい表題を付けます。また、「契約期間を○年○月○日から△年△月△日に変更する」といった変更内容も明記しておきましょう。
契約書と覚書には収入印紙が必要
賃貸借契約期間の延長で覚書を作成する場合、「収入印紙」が必要であることを忘れてはいけません。
印紙税法で定められている印紙税法では、「重要な事項」が含まれている覚書も課税対象となり、収入印紙による納税が義務付けられています。その「重要な事項」は複数あるのですが、契約期間の変更も含まれているのです。
重要な事項については国税庁の資料に明記されているため、以下の「重要な事項の一覧表」を確認してください。
※参照:国税庁HP印紙税の手引き「※ 印紙税法基本通達 別表第2 重要な事項の一覧表」
しかし、印紙税法とは「紙」に課せられる納税義務であり、契約自体を電子契約書で締結していれば納税義務は発生しません。つまり、賃貸借契約期間を延長して覚書を作成した場合でも、電子契約書なら収入印紙を添付せずに文書を取り交わすことが可能です。
電子契約書の導入はコスト削減になる
従来のように直筆の署名・捺印を行う契約書と違い、電子契約書は電子署名やタイムスタンプによって法的な効力のある文書を作成できます。
業務上物件の賃貸借契約を締結することが多い企業なら、紙媒体から電子契約書に切り替えることでコスト削減が期待できるでしょう。「契約にかかるコストを見直したい」という場合は、電子契約書の導入を検討してみてはいかがでしょうか。