民法改正により、成年年齢が「18歳」に引き下げられました。つまり、改正後は18歳以上が成年とみなされ、自分の意思だけで契約が行えるようになります。
この記事では、若い世代と契約を締結することが多い企業に向けて、民法改正の概要と契約における変化、注意点について解説します。
目次
民法改正で契約できる年齢が引き下げられる
成年年齢が18歳になると、どういう変化が起こるのか見ていきましょう。
民法上の成年年齢を「18歳」と定義
民法の改定によって2020年4月から成年年齢が引き下げられ、「18歳」で成年となります。成年年齢の見直しは約140年ぶりで、多くの分野への影響が予想されます。
成年になると、親の承諾なしに自分の判断で様々なことが行えます。例えば、以下のようなことが挙げられます。
・契約
・パスポートの取得
・自分の居住地の決定
・行政書士や公認会計士といった資格の取得
民法改正前、20歳以下は親の庇護下にあったため進路や居住地を親の許可なしに決めることはできませんでした。しかし、18歳が成年年齢となってからは、18歳を超えると親の許可なしに就職や進学・居住地を本人が決められます。
民法改正によってできることが大幅に増えますが、反対に「できないこと」もあります。改正前の女性が結婚できる年齢は「16歳」でしたが、民法改正によって男性と同じ「18歳」となりました。
18歳から契約を結ぶことができる
若い年齢層と契約を結ぶことが多い企業にとって、契約可能年齢の引き下げは大きな変化です。具体的にどのように変化するのかご紹介します。
〇どのような契約を結ぶことができるのか
18歳になると、民法上、以下のような契約を1人で行えるようになります。
・携帯電話の契約
・賃貸契約
・クレジットカードの契約
・車などローンの契約
上記をはじめ、ほぼすべての契約を自分の意思だけで締結することが可能です。
しかし、賃貸契約やクレジットカード、ローンにはすべて審査が存在します。本人の職業や年収から支払い能力を審査した結果、契約不成立の可能性もあるという部分は、民法改正前と変わりません。
「未成年者契約の取消し権」がなくなる
法定代理人(親)の同意を得ていない状況での契約は「未成年者契約の取消し権」の発動が認められていました。
未成年者契約の取消し権とは、未成年者と取り交わした契約に対して法定代理人の同意を得ていない場合に、その契約を取り消すことができる権利です。民法改正前は、契約者が20歳未満である・契約者に婚姻経験がない・法定代理人が同意していないという3つの条件があれば、未成年者契約の取消し権によって契約を取り消すことができました。
未成年者契約の取消し権は、未成年者が成年になってから5年間、契約後20年間が有効期間です。認められると契約者の支払い義務はなくなります。未成年者が支払っていた場合で返還請求があれば、応じなくてはいけません。
上記のような未成年者を保護する未成年者契約の取消権は、民法改正後は18歳までが対象となります。
若い年齢層との契約で注意すべき点は?
契約は、常に慎重に行うものですが、契約を締結した経験の少ない若い年齢層とは特に慎重に進める必要があります。
契約前に詳しい説明が必要
契約を結ぶ際、契約相手が若い年齢層であった場合には、特に手厚く説明するように心がけましょう。
民法改正によって成年年齢が引き下げられたことで、若い年齢層をだまして契約する悪徳業者も存在します。18歳以上になると未成年者契約の取消権が行使できなくなるため、契約に関するトラブルは裁判になるリスクもあります。
自社がそのような業者だと誤解されないためにも、契約によって発生する責任などをしっかり説明するように心がけましょう。
民法改正後も20歳までできないこと
民法改正で成年年齢が18歳となっても、20歳を超えないとできないことも存在します。
たとえば飲酒や喫煙は、民法改正後も20歳を超えるまでは禁止のままです。20歳未満はまだ身体や脳が発達段階であり、悪影響を及ぼす可能性が高いためです。また、競馬やオートレース、競輪といったギャンブルも禁止となっています。
若年者は電子化への抵抗がない
これから成年となる10代や20代といった若い年齢層は、「デジタルネイティブ世代」と呼ばれています。生まれた時からITツールが当たり前のように身近にあり、学校の授業もICTが活用されるなどデジタルツールへの抵抗がありません。
ずっと契約書を紙で取り交わしてきた世代と違い、この「デジタルツールに抵抗がない」という点は大きな特徴です。若い年齢層との契約業務が多い企業は、ぜひインターネット上でスムーズに契約を締結できる「電子契約書」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
若年層との契約締結は電子契約がおすすめです
民法改正による成年年齢の引き下げは、各方面に影響を与えます。親の承諾なしに契約できるという点も大きな変化であり、企業側は若い世代との契約を結ぶ機会も増えることでしょう。
スマートフォンやタブレット、ノートPCを当たり前に使ってきた若い世代にとって、契約もデジタルで行えることはメリットとなります。民法改正を機に、印鑑や収入印紙といったコストも削減できる電子契約書の導入をぜひご検討ください。